第58話
撮影を無事に終わらせた私はあとはみんなのことを眺めるだけとなった。
紫苑も最初はガチガチだったが、今はもう表情を取り繕うことができるようになっていた。
萌歌さんも相変わらずあざとさはあるが、いつだって完璧だ。
最後に萌歌さんとアイラさんの撮影が終わり、撮れた写真の確認をしていた。
「うん!いいね。あっでもアイラさんと綾城さんのショット、撮り直したいかも」
「え?」
撮影をしていた人が急にそんなことを言ってきた。
また撮り直すなんて…ちょっときついんだけど。紫苑のほうを見ても首を振ってるし、これは避けられないのかな。
「あー…綾城大丈夫そ?」
純恋さんが気をつかってか心配そうにこちらを見る。
無理だという目線を送ると純恋さんは頭を掻きながら、『やれ』という目線を送ってくる。
あとで給料高めに請求しよう。
再び着替えて、撮影ブースに立った。またあんなにも接触しなければならないと考えると反吐が出る。
「綾城ちゃん、あとで2人で話さない?」
甘い匂いに顔をしかめないように耐えながらポーズをとっていると、アイラさんが耳元でそんなことをつぶやいてきた。
心底嫌ではあるが、なんだか断っては行けない気がして頷いてしまった。
「オッケーです!お疲れ様です」
撮影と確認を終えて元の服に着替える。
紫苑と純恋さんからは労いの言葉をかけられ、萌歌さんからはチョコを貰った。
萌歌さんから貰ったチョコを食べながら、スマホの開く。通知欄にひなのアイコンが見え、LIMEを開くとひなからメッセージがきていた。
『今度お菓子作ろうと思ってるんだけど、何がいい?』
ひなのお菓子……
温かい気持ちに包まれながら『ひなのお菓子ならなんでも 甘さ控えめなチョコ系が好きかな』と答える。
幸せな気持ちに包まれていると控室のドアがノックされた。
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