第56話
目的地に着いて起こされ、連れて行かれるがままにビルの部屋の中に入るとそこには萌歌さんと紫苑がいた。
萌歌さんは相変わらず自身のツインテールを櫛で解かしていた。
対する紫苑はいつもひとつにくくっている髪の毛を下ろして、三つ編みハーフアップにしていて、肩にかかる髪をしきりにいじっていた。
紫苑はこちらに気がつくと顔を真っ赤にさせてそっぽを向いた。
「み、見ないでください!似合ってないので!」
「あっ!綾城さ〜ん。紫苑たん、ずっとこんな感じなんですけど〜」
萌歌さんいわく、ずっとうじうじしているみたいだ。
「紫苑!めっちゃ似合ってるよ!流石私の自慢の妹だ!」
「うぅ…」
純恋さんは必死に励ましているが、なんだか逆効果のように感じる。
「純恋さん、ここはこっちに任せて出てってください」
「はぁ?!い、いや…姉としての義務が…」
「い〜からい〜から!」
萌歌さんと2人で純恋さんを追い出して、部屋の中をJKだけにした。
「紫苑、恥ずかしがる必要ないじゃん」
「うぅ…で、でも私お二人みたいに可愛くないし…」
「そんなことないでしょ」
「い、いやでも…」
紫苑はかなり卑屈になっているようで心なしか顔色も悪い。重症だな…。
「紫苑、正直紫苑ってかなり顔良いよ」
「そうだよ〜!紫苑たんってまじ推せる顔してるんだよぉ!」
「それにメイクも写真も技術あるし、いつも助かってる」
「なんでもできる紫苑たんまじ推せる!」
萌歌さんと2人で紫苑を囲んで紫苑を激褒めする戦法に出る。
紫苑は顔を真っ赤にさせながらわなわなと震えている。
「紫苑、可愛い自覚持って」
「紫苑たん出たら絶対万バズする!」
2人で紫苑の肩を掴んで顔をあげさせる。
紫苑の目をじっと見据えていると紫苑は我慢できなくなってのか勢いよく立ち上がった。
「わ、わかりましたよ!や、やります!」
「よ!よく言った!」
「紫苑たんサイコ〜!」
紫苑はハイになったのか、勢いよく椅子をひいて私に座るように促した。
「さ!今日は気合い入れてメイクしますよ、あやさん!」
「よろしく」
「ハイ!」
一種のパニック状態になった紫苑のメイクはいつも以上に手際よく、みるみるうちに大人っぽい美人メイクに仕上がっていく。
「わ、わ〜…紫苑たんしゅげぇ…」
萌歌さんも私も正直、ドン引きの領域に入っていた。
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