第53話

「ふんふ〜ん♪」

「ひな、ご機嫌だね」

「うん!」


 ひなは水族館内にあるクジで2等をあてて、可愛らしいペンギンのぬいぐるみを抱っこしていた。見るからにご機嫌で鼻歌を口ずさんでいるのがまた可愛らしい。


 私たちは結局3時間も水族館に居た。まぁ、イチャイチャしていたから時間が延びちゃったんだけどね。


 私たちはお土産を買ってから水族館を出た。向かう先は萌歌さんにおすすめされたレストランだ。


 ここのレストランは大きな窓があって海が見えるきれいな場所だ。


「わぁ!ここ、綺麗だね」


 ひなも喜んでくれており、キラキラとした目で海を眺めている。


 ここのレストランは漁港が近いこともあって魚系の料理が多い。私もひなも肉より魚派なので嬉しいところだ。


 私もひなもそれぞれ料理と飲み物を頼んだ。私は海の幸シチューでひなは海鮮丼だ。


「あやちゃん、今日は本当にありがとね。私、あやちゃんとここに来れてよかった」

「どうしたの?突然。まだお昼だよ?」

「いや、そうなんだけどね…。まだ半日なのに私、浮かれちゃってるみたい」


 ひなはそう言ってえへへと笑った。


「浮かれてるのは、水族館に来れたから?それとも私とのデートだから?」


 私はなんだか意地悪してみたい気分になったから、ひなに意地悪な質問をしてみた。


 ひなは少し目をパチクリとさせると頬を膨らませて拗ねた。


「もう!あやちゃんったら言わせようとしてるでしょ」

「だって、ひながちゃんと言ってくれないんだもん」


 ひなったらいけずだ。奥手過ぎて私がむず痒くなる。


「……から」

「え?」

「だから!…あやちゃんと恋人になったから浮かれてるの…!」


 ひなは周りの目を気にして小さめの声でそういった。


 ひなはどうしてこんなにも私の胸を鷲掴みにしてくるのだろう。私の胸は先程から落ち着く様子がない。


「…そっか」


 私は珍しく何も言い返せなかった。それほどまでに余裕がなかったからだ。


 ひなもそんな私の珍しい姿を不思議に思ったのか、私の顔を覗き込んできた。私は思わず目を逸らしてしまった。


「…あっ!あやちゃん、もしかして照れてる?」

「……照れてない」


 はい、照れてます。


 必死に目をそらして平静を装う私にひなはにやにやが止まらない様子だ。


「あやちゃん、こっち見てよ」

「……」

「あやちゃ〜ん?」

「…うるさい」


 いつもからかわれてるひなの気持ちが少しわかった気がする。

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