　気づくと後ろに立っていたおじさんにお尻を撫でられていました。

　はじめは気の所為かと思っていましたが、少し揉まれるような感覚があり、痴漢されているのだと確信しました。

　怖くて思わず震えているとあやちゃんが心配そうにこちらを見ています。大丈夫だよと言おうとするとあやちゃんが腰に手を回してきました。

　その瞬間、あやちゃんがとてつもなく冷めた顔になりました。

　あやちゃんが自分のために怒ってくれているのだとわかっていましたが、なんだか怖くなってしまいます。

　気づくとおじさんは電車から蹴り出されていて、そんな暴力的なことをしたのがあやちゃんだと理解するのに時間がかかりました。

　それからというもののぼーっとしている間にありとあらゆることが済んでました。その間もあやちゃんはずっと優しく声をかけてくれていたことだけは覚えています。

　家に帰り、ご飯を食べ、お風呂を上がる頃には恐怖心も薄れ、普通に過ごせるようになっていました。

　すると急にあやちゃんからプレゼントを貰いました！可愛らしいクローバーのヘアピンです。しかもあやちゃんとのお揃いだそうです。

　私は痴漢に対する恐怖心などまるでなかったかのように幸福感で満たされます。

　少し恥ずかしかったのですが頼んでつけて貰うと派手すぎないし地味すぎない、というなんとも良いセンスです。

　あとで四葉のクローバーの花言葉でも調べてみようかな、なんて思っているとあやちゃんが真剣な顔で向き直してきます。

　なんとあやちゃんはモデルをはじめるみたいです！同じクラスの西口さんのお姉さんにスカウトされたみたいです！

　一緒にいられる時間が減るのは寂しいことですが、ここは素直に親友の門出を祝います。

　まだ正式にはデビューしていないようなのでデビューした日にはちゃんとお祝いをしてあげようかな、と思います。

　もし、あやちゃんの写真が載った雑誌が出たら絶対に買おう、とひそかに決意しました。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい