第109話
突如部屋に入ってきた男子高校生×4に警戒していると見かねた鈴木さんが声をかけてきた。
「この人たちはね、元々今日カラオケ行こうぜって話てた人たち!一人ぐらい増えても問題ないから〜って言ってたし遠慮しなくてもいいからね!」
最悪だ。最悪すぎる。
そもそも他人が無理なのに異性だなんて本当に不愉快。今すぐにこの密室から逃げ出したい。
あと三十分ぐらい耐えて頃合いを見て速やかに退室しよう。
そう決心したところで何の断りもなく私の隣に当たり前のように座ってきた野猿A。
「話聞いてるよ?田代、綾華ちゃんだっけ?」
『綾華ちゃん』……本当に反吐がでそうだ。
自分の名前は嫌いではないが、こんな初対面の野猿にその名を呼ぶことを許可した覚えはない。
「……田代です」
せめてもの思いで名前を呼ぶなという意を込めて名字を強調する。
「綾華ちゃん、モデルもやってるんだっけ?よかったらイソスタのアカウント教えてよ」
だがこの野猿にはそんな空気を1ミリも察せないのか、下心満載でこちらにすり寄ってくる。
「アースマホの電池、キレテルカモデー」
あと80%ぐらいは残っているであろうスマホを隠し、あくまで白を切り続ける。
その後の三十分は本当に…本っ当に地獄のような時間だった。
名前も知らない(名前を覚える気もないけど)男どもと無理やり会話させられながらも5時が回ってきたところでさっさと帰り支度をして代金だけ置いて席を立つ。
一刻もこの空間から離れたい一心でビルの外に出ると先程同じ部屋にいたであろう野猿が追いかけてきやがった。
「あ、あのっ!綾華ちゃん、俺さ、綾華ちゃんのこといいなぁって思ってて……良ければ一緒に帰らない?駅まででもさ」
あろうことかこの野猿は未だに私についてこようとするらしい。
一切笑わないどころか無関心を貫いているというのに空気が読めない。これだから下心ばかりの野猿は大嫌いだ。
「結構です。一人で帰るんで」
私は目も向けずに駅の人混みの多い方へと向かう。
まだついてこようとする野猿を撒くために帰宅ラッシュの人混みの間を縫いながら普段はあまり通らないようなお店の中まで入った。
改札を抜ける頃には野猿もいなくなり、駅のホームに丁度到着した電車の中に入る。
帰宅ラッシュの時間に被っているので少し人は多いが、壁際に立ち、スマホを取り出した。
ひなからの連絡は特にないが、ホーム画面に設定しているひなの可愛い寝顔に癒やされる。
帰りは電車に揺られながら、ひなの秘蔵写真のフォルダを開いて邪気を払うことに専念することにした。
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