第32話
みんなよりも遅れを取った私達は急ぎ足で更衣室へと向かい、着替えた。こないだ買ったばかりの新しい、おそろいの水着だ。
「ひな、似合ってるよ。かわいい」
「あ、あやちゃんこそ似合ってるよ」
さぁ、海の定番イベントといえばもちろん日焼け止め塗りっ子だ。というわけで早速日焼け止めを手に持ち、ひなに差し出す。
「ひな、日焼け止め塗って」
「へ?い、いいよ」
杏たちが用意してくれていたパラソルとシートの元へ向かい、シートにうつ伏せで寝転がる。
「じゃ、じゃあ塗るね」
「うん」
ひなの小さくて柔らかな手が私の背中を滑る。このためだけにスプレータイプではない、クリームの日焼け止めを買ったのだ。
「っん」
「あ、ご、ごめん」
「いいよ、気持ちいいから続けて」
ひなは優しいソフトタッチなので少しくすぐったい。くすぐりは特に苦手でもないが、好きな人の手と考えると興奮して、いつもよりも肌が敏感になってしまう。
ときに声が漏れてしまい、その度にひなの手が一瞬とまってしまう。やがて背中全体にクリームが行き渡り、ひなの手が背中から離れた。
そして私は身体を起こし、仰向けに寝転がりなおす。
「ひな、前も塗って?」
「ひょえっ?!ま、前は…えと…」
「ね?いいでしょ?」
「う、うん…」
ひなはちょろいので少しおねだりをしただけで、顔を真っ赤にさせてしまう。
恐る恐るといった様子でひなは手にクリームをのせ、私のお腹にクリームを塗り拡げていく。お腹、肩、脚と際どいラインは残した状態で塗っていく。
「ん、ありがと。あれ?ここは塗ってくれないんだね」
そう言って私は水着のフリルを軽くめくる。
「へ?あっ…えっと…」
「ふふ、真っ赤になってかーわいっ♡」
ひなをこれ以上真っ赤にさせてしまえば泳ぐどころではないので起き上がり、自分でさっと塗る。
「じゃ、次はひなの番ね?さ、寝転がって♡」
「え?わ、私は…あっちょっと、あやちゃん?!」
ひなはまだ日焼け止めを塗ってはいない。つまり塗る必要があるのだ。ひなの真っ白な身体にシミを残してはならない。
なので私はひなのことを押し倒した。
「あ、あやちゃん…?」
「ふふ、ちゃーんと塗ってあげるからね♡」
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