第98話
ついに今日が文化祭。
特に何も言うことはないが、わたしたちのシフトは朝一番だ。
展示なので特にこれといった役割はないが、スタンプラリーのスタンプを押したり、お客さんが展示品に触れたりするのを防ぐだけだ。
朝一番の時間なのであまり客も来ないはずだろう。
紫苑とひなとその他三名なのでのんびりとできるだろう。
開会式を終え、ついに一般客がはいる時間になった。廊下もざわざわと騒がしくなり、あっという間に口内が人であふれかえる。
「ひえ〜…人が多いね」
「まわるときははぐれないように手を繋いでおかないとだね」
受付にて人の多さに恐れをなすひなに微笑みかけてそういった。
意外にもひなは乗り気なようで『もちろん、そうするつもり』と応え、受付にやってきた客に対して、応対し始めた。
そんな雛の様子に少し驚きつつも、ちょっといたずらっぽいひなもいいなぁ、なんていう風にも思う。
「あっ!綾城さ〜ん!もえか、来ちゃいましたぁ」
甘ったるい声に振り向くとそこには萌歌さんがいた。
萌歌さんが一番最初に来るなんて少し意外だなと思いつつ、萌歌さんとその連れのスタンプカードにスタンプを押す。
「わぁ!星座モチーフなんですねぇ。綾城さんは何座を作ったんですかぁ?」
「獅子座だよ」
テンション高く、プリプリしてる萌歌さんをいなしつつ、見送った。
「今のは?モデルのお知り合い?」
「うん、萌歌さんっていうんだ」
ひなも接客を終え、さり気なく聞いてくる。
萌歌さんは誰にでも馴れ馴れしく、可愛こぶったりするのでもしかしたらひなが嫉妬してくれたり……なんて思いつつも客はなかなかに多く、スタンプを押す作業に追われるばかりだ。
シフトは45分間。このシフトが終わったらひなとたくさん触れ合える…。
たくさんの人と対面し、なれないことなので流石に疲れてしまう。
隣にひながいるというのに触れ合えないどころか、話さえまともにできないというのが辛い。
たかが45分間の辛抱だ、と自分に言い聞かせ、萌歌さんに絡まれている紫苑を横目に淡々と作業をこなすだけだ。
集中していれば45分なんてすぐにすぎるはずだろう。
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