第97話
「いやーついに明日が本番だねぇ」
ひなは少々疲れた様子でそう言った。
時刻は既に7時過ぎ。ここ最近は本番間近だったため、みんな遅くまで残って作業する。
部活動の少ない私たちも文化祭準備のために駆り出され、こんな遅くまで残る羽目になってしまった。
もう冬に片足を突っ込んでいる時期なので辺りも真っ暗で肌寒い。
「明日は五人でまわれなくて残念だねぇ」
本来なら私、ひな、みづき、杏、紫苑の五人でまわろうかと話していたのだが、みづきは他の友だちと、杏は部活の友人と。そして紫苑はなんと翡翠さんとまわることになった。
いつまで経っても誘わなかったので私が勝手にスマホを奪って誘うメッセージを送ったのだが、誘いは見事に了承され、二人でまわることになった。
ひなとともに達成感に浸りながら背中を押してあげた。
「でも、二人きりで嬉しいな」
私は隣を歩くひなの手を握って甘えるようにすり寄る。
「わ、私も…嬉しい、かも」
街灯に照らされたひなの顔は鮮明ではないが、ほのかに赤く色づいており、目も少し潤んでいるように見える。
明日はひなとの文化祭デート。
もちろん杏との約束も忘れてはいないが、明日はひなをより惚れさせるために尽力しよう。
「あやちゃんはどこか行きたいとことかあった?」
ひなにそんなことを聞かれて今日のHRで配られたクラスごとの展示内容を思い出す。
「んー…やっぱ杏の演劇はみたいかな」
「やっぱりそうだよね!それにお手伝いもお願いされてるんでしょ?私も手伝うし、お手伝いが終わったら一緒に見よっか」
ひなは嬉しそうにニコニコしながら元気にそういった。
ひなと杏は確か小学生からの友人。少し羨ましいが、ひなが杏を想う気持ちは強いはずだ。
ちなみに私とみづきも小学生の頃からの仲だが、二人ほど穏やかな感じではない。言うなれば悪友。
「私、2Bのお化け屋敷とか行きたいなぁ」
「ん、いいけど…ひな、怖いの苦手じゃなかったっけ?」
ひなは怖いものが苦手のはず…。なのに自分から行きたいと言うなんて珍しい。
「いやぁ…その……苦手克服っていうか?ま、まぁ文化祭だし、そんな怖くないはず……」
少し顔を青ざめて震えた声で見栄を張るように言う。明らかにビビっているようだ。
「……あっもしかして…私に甘えたい、とか?」
私は怖いものが得意だ。ひなとホラー映画を見るときはひなが私に抱きついてくるのでむしろ好きだ。
ひなももしかしたら私に甘えたいというよくがあったりするのかもしれない。
今もみるみるうちに顔が真っ赤になってるし。
「素直に言ってくれればいいのに」
「ち、違うからね?!」
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