第96話
私達のブース準備も完成度50%といったところまできた。
ひなのイラストもほとんど完成していて、あとは完成の様子を想定しながら配置など構成をより精密にしていく作業になる。
相変わらずひなとの時間が少ないのは悲しいが、最近は寝る前に電話をするなど家に帰ってからも話したりしているので肉体的接触だけが足りていない。
まぁそれでも最近はその電話中に隠しカメラを見るのが楽しみになっている。
枕を抱きながらソワソワと電話をかける様子なんてどれだけ見ても飽きないのでつい電話を取るのが遅れがちになってしまう。
文化祭が近づいていることもあり、ありがたいことにモデルの仕事の量も減っているので想像よりも負担は少ない。
その代わり翡翠さんや萌歌さんからメッセージでダル絡みをされることも増えた。まぁスタンプでしか返さないんだけど。
そして今日は杏に呼び出されている。
待ち合わせ場所の空き教室に向かうとすでに杏と他数名の生徒が待っており、こちらに気づくと大げさにも皆が席を立って私を招き入れた。
「お忙しいところすみません!」
「いや、いいよ。ところでどうしたの?こんな大人数で」
促されるまま椅子に座り、杏の要件を聞く姿勢に入る。
「実は演劇部のほうの要件なんですけど、今年は部員数が結構カツカツで……それでなんですけど良ければ当日の宣伝を手伝ってもらえないかと…」
杏は申し訳無さそうにそういった。
私に演劇部の宣伝を?演劇に出るわけでもないのに、私が宣伝してもいいのだろうか。
「私達部員は発表30分前には準備に入りますし、なんだかんだ全員が持ち場を離れられない状態で……それで発表の10分前とかからでいいんで体育館の入口で整理というか…呼び込みをしてくれないかなぁ…と」
なんとなく言いたいことは分かった。
しかし、私は呼び込みなんて言うのは得意じゃない。私よりもみづきとかが適任なのではないだろうか。
「私呼び込みとか得意じゃないんだけど」
「それなら問題ないです!演劇部の発表は午後からなんですが、12時を知らせるチャイムのときに演劇部の部室に来てください!そこで衣装とかプラカードを用意してるのでそれを持ってるだけで大丈夫です!」
杏の斜め後ろにいたハキハキとした男子生徒が自信満々な様子でそう言い切った。
周りにいた他の生徒も自身に満ち溢れた表情をしており、流石演劇部だなと言った感じだ。
「……分かった。でも変な衣装とかはやめてね」
「ありがとうございます!」
なにか妙案があるのだろう。ここは良き友、杏の顔に免じて協力してあげよう。
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