第71話

 先週は素晴らしい一ヶ月記念日になった。


 ひなが大喜びしてくれたのはもちろんだが、指輪を渡せたしそれにもう一つの目的も果たすことが出来た。


 それは『カメラを仕掛けること』。


 ひなが部屋を離れた隙に私があげたぬいぐるみの一部に挟ませるように仕込んでおいた。


 帰ったあとでうまく写っているか確かめてみたが可愛らしいひなの姿がきれいに写っていて感動した。


 ひなは私が帰ったあとも余韻に浸っていたようでベッドの上で顔を赤らめながらぼーっと指につけた指輪を見ていた。


 たまに右手薬指の指輪を左手薬指に付けてみたりしているのが特に可愛かった。




「ねぇ、うちの話聞いてる?」

「聞いてなかった」

「正直者ぉ!」


 目の前にいるのはモデル先輩の翡翠さん。すっかり忘れていたが今日は翡翠さんにバイト終わりのショッピングに付き合わせられている。


「だーかーらぁ!しおたんが最近まじやばなんだって!」


 どうやら紫苑の話をしていたようで翡翠さんは結構真剣みたいだ。


「紫苑が?」

「そう!最近しおたんの様子がおかしいんだよ…。ぼーっとしてることが多いって言うかぁ…スマホをやたら気にしてるっていうかぁ」


 その話だけ聞くとそれって恋じゃん。


「恋じゃん」

「そーなの!しおたんにもついに青春が?!てかそのせいで最近すみすみも病み気味っていうかぁ?」


 もしやアイラさんが手籠めに…?それにしてはなんか手を出すのが早すぎる気もしなくもない。アイラさんって臆病者だし。


「だからさ、あやしろってしおたんと同じクラスでしょ?それとなく聞いてよ〜」


 それとなくって言われてもクラス内ではあんまり話すこともないんだけどなぁ…。


「う〜ん……明日仕事あるし、来るときに聞けたら聞くわ」

「それ絶対聞かないやつじゃ〜ん!ホント聞いてよ!」


 私はそれとなくはぐらかしつつ、持っていた飲み物を捨てるために席を立った。


 翡翠さんもそれにつられ、立ち上がり目的もなく歩きだす。


 翡翠さんに連れられるままに歩いていると見覚えのある後ろ姿を見かけた気がした。


 よく見てみるとそれはひなと杏の姿だった。二人もショッピングに来てたんだ。


「あ!あれあやしろの友達じゃね?!」

「うん」

「よっし声かけるべ!」


  私は翡翠さんに引っ張られるままに二人へと歩き出した。

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