第124話

 しばらくひなと私はそのままでいたが、流石に恥ずかしくなってひなの手を開放することにした。


 ひなはそのままいそいそとお手洗いへと行ってしまったが、私の胸と触れ合っていたほうの手をまじまじと見ていたし、気になっていないなんてことはないだろう。


 まぁ、これでひなもそういう行為に対して少しは意識してくれたはずだ。


 ひなはムッツリだろうけど、正直私もムッツリの自覚があったりする。


 いっそのこと私から直接的に誘うべきか?いや、ムードも大事だ。もっといい感じ雰囲気から自然な感じでそういう行為へと移り変わっていくのが良い。


 1番良いのはひなの理想が聞けること。ならば杏あたりに聞いてもらうか?


 そういえばひなに杏が私達が付き合っていることを知っていること、教えたっけ?いい機会だし、杏にひなの恋愛相談にでも乗ってもらおう。それで聞き出してもらおう。


 考えがまとまったところで、ひながタイミングよく帰ってきた。


「ひな、杏と紫苑あたりに私達が付き合ってること教えようと思うんだけど、どうかな?」


 ひなは少しキョトンとしていたけど、すぐにハッとして忙しなく動き出す。


「あっごめんね!実は杏ちゃんにはもう言っちゃってて…」


 ひなは申し訳無さそうに深く頭を下げてきた。


「大丈夫だよ。私も杏には色々相談してたし」

「そ、そうなの?」


 ひなは安心したようにホッと胸をなでおろした。


「私はあやちゃんが話したいのなら、誰でも大丈夫!でも、みづきちゃんには話さないの?」

「うん、みづきは口が軽いからね」


 私がそう答えるとひなはクスクスと笑って『確かに』と言った。


 というか、杏は私とひなで板挟みになっていたんだな。


 ならば話は早い。ひなが帰ったら早速メッセージを送っておこう。


「…あやちゃん、あのね」


 ひなはソワソワとした様子で姿勢を正して何かを言いかけているようだ。


「ん、なに?」

「年明けの3日と4日、家に私一人なの…」


 私は思わず息を飲む。


「お母さんたち、今年で結婚してちょうど20年でね、温泉旅行行くんだって」


 ひなは早口で私と目も合わせずに事情を話しはじめる。


「本当は私もって誘われたんだけど、あやちゃんと遊ぶかもって言ったらお泊り会でもすれば……って」


 ひなは耳まで真っ赤にしてこちらを潤んだ瞳でチラチラと見つめる。


「…私とひな、二人きり?」

「う、うん…あっもちろん、ももたんはいるけど…」

「ん、そっか」


 これは、つまり…その、誘ってる…ということでいいのかな?そういう意味で。


「……準備、しておく」

「…!」

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