第39話

 今日はいよいよ夏祭りである。夏の定番イベントであり、地元の祭りとはいえかなりの人がごった返す。


「お、お待たせ、あやちゃん。浴衣、似合ってるね」


 ひなの家を訪ね、ひなを待っていると浴衣姿のひながでてくる。

 その可愛さといえば私の中の何かが弾け飛んでしまうほどである。


「ひな、今日はお家デートにしようか」

「へ?!あ、あやちゃんったら何言ってるの?!き、今日はみんなと楽しむんでしょ」

「む、そうだった…」


 正直、今のひなは誰が見ても惚れてしまうほど可愛い。いつものおさげ髪を緩く三つ編みにしていつもは下ろしている前髪を四葉のクローバーの髪留めで大きく左に分けていた。

 そのおでこには思わず口づけをしたくなる魅力があった。


 今回の祭りの場所は近所の神社である。ひなの家からは徒歩10分くらいと近く、夕方の住宅街にしてはあたりも騒がしい。

 今回は杏とみづきも誘っており、待ち合わせはひなの家である。私はひなとの2人の時間が欲しかったので待ち合わせ時間の30分前に来ていた。


「あ、あやちゃんこそ…今日は一段とかわいいね。メイクもヘアアレンジもしてるんだ」

「ふふ、ありがとう。杏にストレートでもやりやすいアレンジ、教えてもらったんだ」


 実は杏とひなの誕生日プレゼントを買いに行った日にヘアアレンジの方法を教えてもらったのだ。なので今日はいつものように下ろしているのではなく軽めに結ったシニヨンにしている。

 メイクもいつもは薄めにしかしていないが、今日はいつもより気合を入れている。


「ひなもいつもしてないけどメイクしてるでしょ。かわいいね」

「えへへ…やっぱりまだ慣れないけどいとこに教えてもらいながら頑張ったんだ」


 いつもはノーメイクなひなだが今日は可愛い系のメイクをしていて本当に家から出したくない。


 とりあえず待ち合わせの時間にしては早いのでひなの家にお邪魔することにした。相変わらずももたは歓迎してはくれていないようだが、お義母さんは歓迎してくれた。


「あらあら〜、あやちゃんお綺麗さんにして〜こりゃあ悪い男にナンパされちゃうわよ〜」

「ありがとうございます」


 確かにまつりには多くの人が集まり、悪い輩も必ずいることだろう。特にナンパには気をつけなければ。


「ひな、何かあったら私を呼んでね」

「?うん、わかったよ」


 今日はひなに何もないように気を張り巡らせておこう。

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