第66話

 無事、プラネタリウムについた私たちはネットで購入しておいたチケットを提示して、パンフレットを貰った。


 席について、まだ上映時間までには時間があるのでひなと二人でパンフレット覗き込む。


 パンフレットには可愛らしい星がモチーフのキャラクターとおしゃれなデザインかつ見やすい。


 私たちがこれから見るのは秋から冬にかけての星座。これからの時期だ。


「ねぇ、あやちゃん」

「ん?なに」


 ひながちょいちょいとパンフレットを持つ私の手に触れてくる。


「冬になったら一緒にオリオン座、見ようね」

「…うん」


 星座名を言われてもよくイメージが湧かないのだが、ひなの可愛さにそんなどうでもいいことは頭から吹き飛んだ。


 オリオン座…冬の大三角形とかだっけ?


「ひな」

「ん?」

「オリオン座が見えたら教えてね」


 どうせならひなに教えてもらおうと声をかけておく。


 ひなは私の言葉を聞くと優しげに微笑んだ。


「ふふっ…あやちゃんったら、オリオン座が何かわからないのに見るって頷いたの?」


 ひなは私を少しからかうようにそう言った。


 その言葉に私は少しムッとしつつもひなと手を繋いだ。


「…わかんないけど?」


 ひなはなにがおかしいのかクスクスと笑いながら私の頭を撫でてくる。私は撫でるほうが良いんだけどな…。


 少しの間、そうしてゆったりとしていると職員さんがやってきて挨拶をはじめた。


 ひなもそれに気づいてワクワクとした様子で暗くなりつつある会場の天井を見上げはじめた。


 つられるように上を見上げるとそこには無数の星があって思わず感嘆の声が漏れる。


「あ、ほら…あそがオリオン座だよ」


 ひなの指す方向を見上げるとさっきパンフレットで見たような形が見て取れた。


「ほら、あの赤い一等星がベテルギウスだよ」


 明るく光るオリオン座の星星を見ているとひなが軽い解説もしてくれた。


 ベテルギウスぐらいなら私でも名前を聞いたことがある。


 ふと、ひなの方向を見ると暗くて詳しい表情はわからないのだが、星が反射して瞳に数々の星が輝いていた。


 そんな様子が美しくて、ひなの瞳に宿るベテルギウスが私の心を鷲掴みにした。


「…私、ベテルギウス好きかも」

「ふふ、そんなに気に入ったの?」

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