第88話

 無事にお揃いのイヤリングを購入した私達はひなが予約してくれているレストランへ向かうことにした。


 購入したイヤリングはひなの好きな色である黄緑色と私がよくモデルで着せられている赤色のイヤリングを色違いの同じ形を購入し、片方ずつ交換した。


 なので私の左耳には赤色、右耳には黄緑色のイヤリングを。ひなは逆に左耳が黄緑色で右耳が赤色である。


 はたから見ると完全にバカップルではあるが、これはこれで周りを牽制できるので私としては満足である。


 同じく満足そうなひなに連れられるがまま大型ショッピングモール内にあるレストランに入る。


「ここ、結構評判の良い洋食屋さんでね、その…デートにぴったり、って書いてあったの」


 ひなは私に顔を見せないまま店内に入る。ひなの耳が赤くなっているのを見るに、大分意識してくれているのだろう。


 店員に案内されるがまま店の奥に入り、窓際の席に座る。ちょうど端の席なのでひなと景色に集中できるいい席だ。


「景色がとってもいいね。すごいデートっぽいよ」

「で、でしょ?」


 ひなはホッとしたのかふにゃっとした顔で微笑んだ。少し幼く見える顔だが、わざわざこんなおしゃれな店を探して予約してくれていたなんて、少し頼もしい。


「うん、しっかりエスコートまでして」


 道中のひなは私のことをよく気にかけてくれていた。特に男性とすれ違う時なんかは遠ざけるように腕を引いてきて、なんだか番犬みたいで可愛かった。


「かっこよかったよ」


 私が素直にそう褒めるとひなは照れくさそうに笑った。


「ほ、惚れ直しちゃった?」

「うん、もう抜け出せないかも」


 いたずらっぽく笑うひなも小悪魔的な雰囲気が出ていて可愛らしい。


 今はひなと対面の席なので手を握ったり抱きしめたりできないのが悔しいところだが、変わりにひなの目をじっと見つめる。


 一秒も経たない内にひなは目を逸らしてしまう。いつかは0距離でも目を逸らさずに私だけを見てくれるのかな?


「う、うぅ…今日はあやちゃんかっこいいの禁止!今日は私がエスコートするんだから…私がかっこよくないとなのに……」


 ひなはプンプンと怒りながら自分の顔を隠すようにメニュー表を開く。


 ボソボソと文句を言っている様子が祖母の家にいるよく喋るトイプードルを思い出させる。


 私もメニュー表を開いてチラチラとこちらを見るひなに気づかないふりをすることにした。

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