第37話

 海を楽しんだのもつい数日前。運動不足の美月は筋肉痛に襲われているようで邪魔をされない良い機会だ。

 そのため私とひなはつい先日に夏の課題をほとんど終わらせた。後は答え合わせぐらいだ。


 まだ夏休みは3週間以上あるのでまだまだ楽しむことができるのだ。


 しかし、今日はひなと一緒ではない。来週に迫り来るひなの誕生日のために杏とプレゼント選びにきている。


「杏、大丈夫?」

「は、はい…ありがとうございます」


 杏はあまり人混みに慣れていないようなので私が手を引っ張って先導する。


 今日はいつもとは違う街の方のショッピングモールに来ている。さすが夏休みというだけあり、なかなかの人混みである。


 ひなへの誕生日プレゼントはもう決めてある。本来であれば手作りの何かを上げてみたいものだが生憎私は料理も手芸も得意ではない。

 なので私は既製品のプレゼントだ。既製品と行ってもちゃちなものではなくしっかりと私の気持ちが伝わるものだ。


 そう、指輪である。


 ただ数万円もする指輪は高校生にしては金銭的にも重すぎる。つまりはそこそこの物になってしまう。これは悔しい部分ではあるがしかたがない。


「杏はひなに何あげるの?」

「えー、そうですね……無難にクッキーでも焼こうかなぁと」

「ふーん…お菓子が作れるのはずるいよなぁ…」

「あやさんも練習すれば良いんですよ!ひなもお菓子作りできますし、教えてもらう、とか!」

「なるほどね〜…うん、バレンタインとかにいいかも」


 お菓子作りを教えてもらう。なかなかに良いイベントではないか。流石は杏、良いアドバイスをくれる。


 そうこうしているうちにアクセサリーショップにたどり着く。願うなら四葉のクローバーのものが良いなと思っている。

 前回はたまたま惹かれたものが四葉のクローバーだったが調べてみると花言葉に『私のものになって』という意味合いがあるらしい。たまたまではあったが実に目的に合ったものだ。これは奇跡としか言いようがないだろう。


「うーん…四葉のクローバーがいいんだけど、ここにはないね」

「四葉を探してるんですか?そういう可愛い系だと2階のお店のほうが数ありますよ」

「ん、ならそっちにしよっか」


 本当に杏がいて助かった。杏自体あまりおしゃれにこだわりはないが演劇に関する服飾にはこだわりがある。人選は間違っていなかったようだ。

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