第31話

 ついに今日は海!私とひな、西口姉妹、みづき、翡翠さん、杏の7人だ。

 ちなみに純恋さん運転のミニバンでのミニ旅行だ。太っ腹なことで純恋さんは近くの旅館まで予約してくれていた。


 翡翠さんは早速私と写真を撮り、イソスタにて旅行報告をしていた。


「それでですね、今度の公演でO高が演じるのがかの有名なあの作家のあの作品でしてー…」

「お、おう。なんかよく分からんが落ち着け」


 みづきは早速杏の演劇話の餌食になっていた。西口姉妹はよく聞こえないがお金の話をしていた。

 カオスとかしたこの空間は居心地が悪いが、肩に寄りかかる小さな頭だけが癒しだ。昨夜はよく寝れなかったのか、ぐっすりと寝てしまっているひな。かわいい。


「おい、無言で寝顔写真撮るな」

「うるさいですよ、ひなが起きちゃう」


 ひなの寝顔は金よりも高い価値がある。今この瞬間を捉えていないければとてつもない損をしたことになるだろう。


 ◇◇◇ 


「はぁ〜やっとついた〜!あのカオス空間からの脱っ却!」

「翡翠さんはあまりはしゃぎすぎないでくださいよ。ナンパとかについていっちゃダメですよ」

「紫苑たんはうちのことどんだけ子供だと思ってんの?!」


 紫苑と翡翠さんの茶番劇を横目に寝起きのひなを支えながら旅館へと向かう。荷物を先においておくためだ。この旅館は海と近いため、外に面している場所に水着のための更衣室がある。

 翡翠さんと純恋さん、そしてみづきはすぐに荷物をおいて更衣室へと向かって行ってしまった。


「ひな、着替えに行くよ」

「んぅ〜…」

「あっあたし、シートとか、荷物持ってっときますね」

「じゃあ私も先に行っときますね。お姉ちゃんが心配だし…」


 まるで空気を呼んだかのように杏と紫苑も部屋を出て行ってしまった。ようやく目が冷めてきたひなにもう少しゆっくりしよっかと声をかけ、畳に座る。


「ごめんね、あやちゃん。もうそろそろ行こっか?」


 目が完全に冷めたひなは私を気遣うように見上げてくる。


「大丈夫、2人きりの時間も欲しかったから、ね?」

「う、うん…」


 結局私達はみんなよりも30分ほど遅れて出ることになったのだった。

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