第70話
出窓のほうを向いたひなに後ろから近寄ってひなに抱きつく。
お風呂上がりということもあって暖かく、シャンプーのいい匂いが香ってくる。
「あやちゃん?今日はなんだかロマンチストだね」
ひなは抱きついた私の腕にそっと手を沿わせて笑った。
「……そんな気分なの」
ひなに指輪を渡すためには良い舞台だろう。
ひなの体温が上がっていくのが伝わってくる。ひながドキドキしてくれているのは確かだろう。
「ひな、私この一ヶ月本当に幸せだった」
「ふふっ…私もだよ」
私はひなに今までの思いを打ち明けることにした。もちろん隠す部分もあるが嘘のない私の気持ちだ。
「ひなのこと、ずっと大好きだったからこうして恋人になれたのが本当に嬉しい。ひなのことをずっと私のものだ、って独占している気分になる」
「あ、あやちゃん…」
ひなは私の突然の発言に恥ずかしそうに身じろぎした。
「ひなが他の人といるとモヤモヤするし、嫌な気持ちになる。私、ひなのこと好きすぎて周りを警戒しちゃうんだ。ひなを独占したいんだ」
「…………」
黙り込んでしまったひなに一抹の不安を抱きつつも私は止まることが出来なかった。
「ひなの柔らかい髪もひなのクリクリな可愛い瞳もたまに上擦っちゃう可愛らしい声も全部、私だけのものにしたい。恥ずかしがり屋な性格も動物の動画を見ているときのふにゃふにゃな表情も全部全部大好き」
私はそっとひなと場所を入れ替わってひなの正面に座る。
隠していた指輪のケースを取り出し、開いた状態でひなに差し出した。
「ひな、私と運命になろう。一生愛することを誓うよ」
私が言葉を発して数秒。何分にも感じる短い時間。
ひなの息を呑む音が聞こえたとき、私の心臓は止まりそうになった。
ひなに拒絶されたらどうしよう。私はひなの気持ちを勝手に予想していただけで本当は嫌がっていたらどうしよう。ひなの好みじゃなかったらどうしよう。
不安を抱える私は我慢しきれず、顔をあげた。
「……っ」
ひなは泣いていた。
ひなの目から大粒の涙がこぼれ落ち、月明かりに照らされる表情からはどういう感情なのかが読み取れない。
「ひ、ひな?」
私が声をかけるとひなはビクッと反応をして、笑った。
「ご、ごめんねあやちゃん!そ、その…嬉しすぎて……わ、私もあやちゃんのこと大好きだし………そ、その…あやちゃんの運命になりたいな?」
私はその言葉を聞いた瞬間、ひなを押し倒す勢いで抱きしめた。
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