第103話
今日は月曜日。本来ならば学校のある日。
今日は祝日で明日は文化祭の振り返り休日である。そして今日は文化祭の打ち上げの日でもある。
ひなと事前に待ち合わせして電車に乗り、街中へと向かう。
ひなの耳と私の耳にはそれぞれ互い違いになった色のイヤリングをつけており、完全なる匂わせである。
以前に買って交換したものだが、こういうときに買っておいてよかったなと思う。
駅の改札口付近で紫苑と合流し、待ち合わせ場所へと向かうことにした。
「あ!田代さ〜ん!」
鈴木さんらしき元気な声にそちらの方を向くと数名のクラスメイトとこちらに大きく手を振る女性がいた。
「……誰?」
「私だよ!す・ず・き!」
……人によっては学校で会うときと休日似合うときで顔が全く違う人っているよね。
今回の打ち上げ会場であるお店に入り、通された大きな部屋をほとんどクラスメイトで埋め尽くす。
運良く四人席が空いていたので私とひなと紫苑で座り、机の上にあったメニューを開いた。
私は特に食べたいものがないので、実際にバイキングへ行ったときにその時の気分で食べるものに決めようと思い、二人にメニューを渡した。
「そういえば紫苑ちゃん、その服かわいいね」
「えっ…そ、そうかなぁ?」
一通り注文を終え、他のクラスメイトたちが戻ってバイキングが空くまで待つことにすると、ひなはワクワクとした様子で紫苑の服装について質問した。
確かに改めて見ると今までの紫苑からしては珍しく、ロングスカートを履いていた。
いつもならばパンツを履いてきていたはずだろう。
「じ、実はね…翡翠さんが『スカートいいね!』って」
頬に手を当てて恥ずかしそうに惚気ける紫苑を見ながら、『紫苑は急に褒められると結構喜ぶ』と突拍子もなく翡翠さんへメッセージを送った自分を心のなかで褒める。
「え!それってもしかしたら気があるんじゃない?!」
「そ、そんな!早とちりですよ!」
目を輝かせて興奮するひなとおどおどしながらも満更でもなさそうな紫苑。
キャッキャと恋バナをする二人を眺めているとなんだかモヤモヤとした気分になってくる。
「……もう向こう空いたんじゃない?」
続々と戻って来るクラスメイトを横目にバイキングへと向かうために恋バナをする二人を立たせてお盆を持つように促す。
「ひなさん、あれは嫉妬というやつです!」
「や、やっぱりそうかな?」
ヒソヒソと恋バナを続ける二人にお盆を押し付けた。照れ隠しではない。
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