第42話
走り去ってしまったひなを追い、人波をかいくぐっていく。ひなを追いかけているうちに人数も減っていき、近所の公園にたどり着いた。
「はぁ…はぁ……ひな?どうしちゃったの?突然走り出すなんて」
「……」
ひなは立ち尽くしたまま息をあげていた。せっかくの浴衣も崩れており、足を震わせているのでなれない下駄によって足もつらい状態なのだろう。
「ひな?とりあえず、落ち着いて話そ?」
ひなを落ち着かせるためにもベンチに座らせて、ひなの顔を覗き込んだ。ひなは暗い顔をしていて唇を固く結んでいる。
「ひな…どうして走って行っちゃったの?」
「…だって、あやちゃんたちが…」
「私たちが?」
おそらく先ほどの杏子と私の会話を聞いていたのだろう。ただどこまで聞いていたのだろう?『ひなを私のものに…』とか聞かれていたら大分まずい…。
「あ、あやちゃんは杏ちゃんと付き合っちゃったんでしょ?」
「え?」
私と杏が?付き合っている?
「ど、どうしてそう思ったの?」
「だ、だって…『杏子は私に必要だ~』とか、『好きだ~』とか…言ってたじゃん」
ひなはどうやら重大な勘違いをしているようだ。私たちの会話を部分的に聞いていたのだろう。ただ、一番聞かれたくないところは聞かれていなかったので不幸中の幸いだろう。
「ひな、私と杏は付き合ってないよ」
「え?で、でも…隠さなくっていいんだよ?」
「いや、本当に違うの」
ひなは私と杏が付き合ったと思って逃げてしまったのか。なんて可愛らしいんだろう。これはもう私のことを好きということで間違いはないだろう。ならばもう恐れることはない。
「あのね、ひな」
「う、うん…」
「私はねひなの事が好きなの。愛してるの」
「え?」
本当はひなの誕生日にプレゼント付きで言うつもりだったが、ここで言ってしまおう。
ひなは目を大きく見開いて驚いているようだ。
「え?でも…」
「杏は私の気持ちを知ってるの。だから協力してもらったり、相談してた」
ひなはまだ混乱しているようだが私の真剣な瞳を見て、段々と顔が赤くなっている。ひなのそんな可愛らしい表情に思わず笑みがこぼれる。
ひなの左手を両方の手で包み込み、深呼吸してからひなを改めて見つめなおす。
「ひな、愛してる。好きだよ。私の恋人になってほしい。だから私と付き合ってください」
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