第86話
あの後、翡翠さんの手によって私はイヤリングをプレゼントされた。
正直いらないと思っていたけど、ひながどんな反応を示すのかが気になったというのもあるので翡翠さんに言われるがまま買ってすぐつけておくことにした。
選ばれたのは爽やかな緑色でひなとおそろいにしているクローバーの髪飾りと近しい色にした。
まぁそんなことをしていたのでひなとの待ち合わせ時間ギリギリになってしまった。
翡翠さんをほぼ置いてけぼりにする勢いで待ち合わせ場所に向かい、ひなの姿を確認して鏡で髪が崩れていないかを確認しておく。
「あやしろ〜置いてくのはないだろぉ」
「待ち合わせまですぐなんで」
私は崩れた前髪を整えて深呼吸をして私を待つひなのもとへ向かう。
ひなは今日も可愛くおめかししており、今日というデートを楽しみにしていたのだとその表情が物語っている。
「ひな、お待たせ」
ひなは私が声をかけるとパッと顔をあげて嬉しそうな笑顔でこちらに駆け寄ってくる。
しかし、ひなは私を見た後少し表情が曇ったように見える。
もしかして待ち合わせ10分前に来なかったことを怒ってる?いや、ひなはそんなことでは怒らないはず…。
「あやしろ〜二度も置いてったなぁ?!」
私に追いついた翡翠さんは空気を読めていないようで私に肩を組むように突っかかってくる。
「んぉ?あれひなたんじゃん!待ち合わせってひなたんとだったの?」
「翡翠さん、私達これからデートなんで」
「あら」
私は翡翠さんの手をどかすと固まったままのひなの手を取って翡翠さんとは逆方向に歩き出す。
「デート楽しんでこいよぉ!」
翡翠さんは相変わらず空気が読めていないようで、去っていく私達に向かって大きく手をふっている。
「ごめんね、ひな。ちょっと寄り道してたら遅くなっちゃった」
「う、ううん大丈夫。そ、それよりさ…その耳の…」
ひなは私の耳に手を伸ばし、イヤリングに触れる。
「ん?あぁこれ。さっきイヤリング見ててこれと色が似てたから買っちゃった」
私は自分の髪飾りに少し触れてひなが見やすいように少し前かがみになる。
「ふーん……可愛いけど…その、今日は外さない?」
ひなは珍しいことに私にイヤリングを外すように要求してきた。ひなのお願いなら断りはしないが、似合ってなかったかな?
「?うん、分かった」
私はイヤリングをササッと外してポーチの中にしまっておく。
ひなはまだ少し表情が曇っているようだが、これからデートだ。気を取り直してもらわなければ。
「ひな、今日はひながリードしてくれるんでしょ?」
「あ、うん」
ひなは思い返してくれたみたいで恥ずかしそうに頬を緩めながら繋いでいる手にギュッと力を入れてくる。
「きょ、今日はまず映画を見に行きます!」
「うん」
元気を取り戻したひなを微笑ましく見ながら私はひなに手を引かれるまま歩き出した。
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