第64話

 今日はひなとの一ヶ月記念日だ。


 ひなもこの1週間は常にソワソワとしていて浮かれているようだった。


 今日はひなの両親が結婚記念日の前々日のようでひなが適当な理由をつけて旅行に行ってもらっているみたいだ。


 つまりはひなと私の二人きり。


 厳密にはひなの飼い犬もいるから完全に二人きりというわけではないが、まぁいいだろう。


 今日はモデルの仕事もないし、ひなとの特別なデートを楽しもう。


 私が計画した特別なデートとはずばり『プラネタリウム』だ。


 杏の情報によればひなは結構星座に詳しいみたいだ。なんでも小学生の頃の宿泊研修では夜になると星座の話をよくしてくれていたのだとか。


 羨ましいなという気持ちもあったが、もしかしたらプラネタリウムに行ったらまた同じように星座の話をしてくれるかもしれない。


 そんな淡い希望を抱きつつもひなとの待ち合わせ場所である駅に向かう。


 改札を通ると駅のベンチに座るひなを見つける。


 鏡を見て前髪を整えたり、ワンピースの襟を整えたりしている。その風貌はまさにデート前の女の子で可愛らしい。


 ひなに近づいていくとひなもこちらに気がついたのか、慌てて立ち上がった。


「お、おはようあやちゃん!」


 ひなは今日、とても緊張しているようでまだ何もしていないのにも関わらず、顔が真っ赤だ。


「おはよう、今日も可愛いね」


 そういってひなのふわふわな髪を優しく撫でる。


「まだ、何にもしてないのに顔、真っ赤っかになっちゃってるよ?」

「あっ…うぅ…」


 ひなは恥ずかしさのあまり、言葉にならない言葉を発していた。


 いじわるしすぎたかな…なんて思っていると、ひなは私の服を少し引っ張ってこちらを上目遣いで見上げてきた。


「あ、あやちゃんが美人さんすぎてびっくりしちゃったの…」


 ひなは潤んで瞳をして小声でそう言ってきた。


 そんなひなの可愛さに私は思わずこのまま駅のトイレにでも連れ去ってしまいたいという欲を覚える。


 そんな欲をグッと堪えつつ、愛しいひなを見つめる。


「ひな…そんな可愛いこと言っちゃったら襲っちゃうからね?」


 先程以上に真っ赤になってしまったひなをやってきた電車の一番端の車両に連れ込みボックス席に座らせた。


 今日は電車に人が少なくてよかった。

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