第80話
私が出る競技は2つ。それは『大縄跳び』と『クラス対抗リレー』。
大縄跳びは最初の方のプログラムでもうすでに終えた競技だ。
特に言うことはないが横目に見たひなの揺れる胸が他の誰かに見られてないかと辺りを警戒しているうちに終わっていた。
結果は2位と悪くはない出来だろう。鈴木さんは手を地面について悔しがっていたが……。
応援テントの下で体育委員の人らが次の競技の準備を眺める。
「紫苑ちゃん…大丈夫?」
私のそばにはイツメンと化した紫苑がお茶を喉につまらせてひなに介抱されていた。
ちなみにみづきと杏は別のクラスなので今日は敵だ。
「ゲホッゴホッ…あ、ありがとうございます…もう大丈夫です」
紫苑はようやく喉のつまりが収まったようでゆったりと脱力してブルーシートの上に座った。
『それでは〜2年生による〜クラス対抗、ムカデ競争がはじまります』
グラウンド全体にアナウンスがかかり、2年生たちによる選手入場がはじまる。
ひなも仕事だと言わんばかりに立ち上がってカメラを起動させる。
私自身もひなの真剣な横顔を撮影したいという欲にかられながらも立ち上がり、学校から借りたカメラのレンズカバーをはずす。
『撮影する時はあんまり同じ場所じゃなくてバラけて撮ってねぇ』
これは顧問の先生に言われた言葉。私は顧問を恨んだ。
私は悲しみにかられながらも靴を履いて自分のクラスの応援テントを後にした。
私は人目を気にせず他のクラスの応援テントの前で撮影をするほどの勇気や度胸は持ち合わせていない。
ならば私が向かう場所…いや、向かえる場所はただ一つだろう。
「あれ?あやさんじゃないですか。どうしたんです?」
杏とみづきのクラスは私達のクラスとは結構離れた場所にテントがある。
これぐらい離れているのなら画角もかなり違うし、同じ場所ではないから怒られはしない。
「杏、今日の杏は一日新聞部だよ」
「え?」
私は杏の腕を引いて堂々と杏のクラスの応援テントに入っていった。
ハチマキの色は違うし、新聞部である証明のゼッケンがあるので結構目立っているが、今の私は一人ではない。
「え?あの…」
私はテントを立てている支柱を背にしてカメラを起動させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます