第83話
「疲れた…」
「私も…でも、楽しかったね」
隣で力なくひなが微笑んだ。
ついに体育祭も終わった。なんだかんだ長かったな、と感じる一日だった。
「紫苑ちゃん、大丈夫だったかなぁ」
「あぁ、リレーでコケてたもんね」
あれは可哀想だったな。顔真っ赤にして俯いたまま走ってたもんな。
幸い軽い擦り傷だったから良かったけど、純恋さんが遠くから叫んでいたのも含めて本当に可哀想だなと思った。
私とひなは体育祭が終わった後、クラスの女子たちにカラオケに誘われたが流石に運動した後にそんなことをする体力はないので丁重に断った。もちろん紫苑も。
そして駅から家の近いひなの家でアイスを食べながらくつろいでいるところだ。
今日はひなとの接触が少なかったので本当ならすぐに家に帰って汗を流し、寝てしまいたいところだが、こうして放課後もひなと共にいる。
なんだかんだ出場競技の前後と応援合戦時、そして昼食のときぐらいしか一緒にいれなかった。いつも四六時中一緒だから寂しかった。
物思いにふけっていると肩に少しの重みを感じた。
「ひな?」
そちらに目線を移すとひなが私の肩に頭をちょこんと乗せていた。可愛らしい頭頂部に話しかけても反応は無く、規則良い息が聞こえてくる。
私はそんなひなの様子にバテてしまったのかと不安になる。
ひなは体力があるわけではない。それに、ひなはたとえ体調が悪くても人に頼れない性格だ。
心做しか髪の隙間から覗くひなの耳が赤くなっている。熱でもあるのかもしれない。熱中症は洒落にならない。
「ひな、体調悪い?ベッドで寝てな。なにか買ってくるよ」
私はひなの頭をそっと撫でてひなに休むように促す。
ひなは頭を撫でている私の手をそっと掴み、その手に頬ずりするようにすり寄ってくる。
「……ひな?」
私はいつもと様子の違うひなに戸惑いながらもいつもより色っぽい雰囲気にドキドキしてしまう。
「……今日はあんまりあやちゃんとこうして触れられなかったから、ちょっとだけ」
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