第111話
時は過ぎてもう12月。
あれから鈴木さんたちへの怒りも収まり、たまになら遊びに行くようになった。ひなも一緒に遊びに行くこともあるが、ひな抜きで遊びに行くほうが多い。
あと一週間後にある期末テストがすぎればあっという間に終業式。そしてクリスマス。
今日はひなの気持ちをよく確かめるためにもひなの家にお勉強会と称して訪ねている。
今日はひなのご両親もいないみたいだし、犬はいれど邪魔されないようにケージの中で眠ってもらっている。これで本当に二人きり。
「あやちゃん、ここはなんで4になるの?」
ひなは現在数学を、私は歴史を勉強している。
私は理系、ひなは文系なのでお互いの苦手科目を補い合えるという相性のバッチリさである。
まぁ私は現在、歴史という暗記科目を勉強中なので質問することもなく、ワークブックを解いているだけなのだが。
「……あやちゃんってさ、最近他の人とよく遊ぶようになったよね」
課題になっていた数学のプリントの答え合わせを終えたひなは、私の手元を見つめながらそう聞いた。
頬杖をついて伏し目がちながらに聞いてくるその様子はまるで嫉妬しているようだ。
「…そうだね。人見知り克服したかも」
あくまで世間話の一環として流すように、重要ではないかのように返答する。
ひなはモヤモヤしていたり、悩んだりしているときに自身のお下げ髪の毛先を触る癖がある。
今のひなはまさにそれ。私の返答に思うところがあるのだろう。
「ひなも、中学の時はそんなでもなかったけど、仲いい人増えたよね」
「そ、そうかな?」
私がひなと帰らない日。ひなは委員会で知り合ったであろう女子生徒と下校している。
ひなと同じように本が好きな文学少女。話によると家にも遊びに行ったことがあるらしい。本でいっぱいな部屋があったとか。
お互いに離れたことで別の人と深く関わるようになる。
当たり前の摂理だが、とても嫌なことだ。今すぐにでもやめたい。
だが、ひなは私のことをちゃんと想ってくれているようで、こうして嫉妬しているのだろう。
ここは嫉妬心を自覚させるためにも『嫉妬してるの?』と言うべきだろうか。
そう悩んでいるとひなは私の隣に移動して、私の肩に頭をあずけてくる。
勉強中の私にちょっかいをかけてくるという珍しい行動に、どうしたものかと顔を覗き込むとほのかに少し唇を尖らせてすねた様子でぼそりとつぶやいた。
「少し…嫉妬しちゃうな…」
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