第23話

 お風呂から上がり、ひなの部屋着を身にまとう。身長差的にきつくないかと心配もしたがひなは部屋着をオーバーサイズにしているようでぴったりサイズだった。


 リビングに居るひなのお義母さんに一言声をかけ、ひなの部屋に帰る。


 ひなは髪を乾かしている最中だったようで、こちらに気づくのに少し遅れていた。


「あっ、あやちゃん、もうすぐ髪乾かし終わるからもうちょっと待っててね」


 ひなはお風呂場でなにも起きなかったかのように話しているが声は震えているし、耳だって真っ赤のままだ。そんな虚勢をはってしまうところもかわいい。


「ひな、ひなが乾かしてよ」


 乾かし終わってドライヤーを差し出してくるひなにドライヤーを押し返してそう頼む。


「え?…まぁ、いいけど」

「ん、ありがと」


 私の髪は超がつくほどのストレートだ。さほど乾かすのは大変ではないはずだ。


 ひなの優しい手使いを感じながらぼーっとしていると、眠くなってくる。

 ほとんど乾かし終わり、髪を梳いてもらっている頃には片足が夢の世界へと旅立ってしまいそうだった。


 そっと後ろにいるひなにもたれかかり上目遣いでひなの顔を見やる。


「ちょっと、あやちゃん。髪がとけないよ」

「…ん、もういいでしょ」

「もうあやちゃんったら…眠いの?」

「うん…」


 ひなは困った顔をしながらも聖母のように優しく微笑む。


 最後の力を振り絞り、ひなの力を借りながらもなんとかベッドの上に這い上がる。

 お風呂から上がったときに歯を磨いていてよかった。歯ブラシまで用意してくれていたひなのお義母さん様々だ。


 薄れゆく意識の中でひなの顔を見上げる。


「…ひな」

「ん?なぁに、あやちゃん」

「…愛してるよ」

「っ!?」


 ひなの聖母のような微笑みを最後の景色として目をつぶる。開けようと思っても開けることができないくらい重たい。


 今日はなんだか寝すぎな気もするが、私も私で慣れないことをしていた反動なのだろう。

 今日はとりあえずゆっくり寝よう。


 ひなのベッドでひなの匂いに包まれながら、眠りに落ちるのであった。

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