第51話

 今日は待ちに待ったひなとの初デートの日だ。


 今日の待ち合わせ場所はいつもと違ってひなの家ではなく最寄り駅だ。よりデート感を出すためにそうしたい、とひなから言われたのだ。


 ひなも可愛いことを言うものだと思いつつ自分の姿を駅にあったガラスに写しだす。


 今日の私は紫苑からのアドバイスのもと、大人っぽいコーデになっている。薄めの柄シャツとスカートガウチョのシンプルさではあるが物足りなさはない。


「お、おまたせ!あやちゃん」


 ひなの声に振り向くとそこには天使がいた。


 白のワンピースが天使のものそのもので普段は結ってある髪を今日はハーフアップにしていた。少しいつもより身長が高く感じるのは少しヒールのある靴を履いているからだろう。


「…ひな、おはよ。今日は一段と天使だね」

「て、天使って…でもあやちゃんも今日は女神様というか…き、綺麗だよ」


 ひなは慣れない感じで私のことを精一杯褒めてくれる。


 今すぐに家に連れ戻って押し倒し、私のものにしたい。そんな欲は心の奥に封じ込めて来たる日までのお楽しみにしておこう。


「じゃ、いこっか」


 私はひなの手をとって乗り場へと向かった。もちろん手は恋人つなぎだ。


 ひなも中々に初心なものでこうして恋人つなぎをしただけで顔が赤くなっている。そんな可愛い顔他の人に見られたくないんだけどな…


「あ、あやちゃん、今日はどこに連れてってくれるの?」


 ひなは緩んだ顔でそう聞いてきた。


「んー…どこだと思う?当てたら豪華景品だよ」


「え〜…難しいなぁ…でも景品は気になる!」


 ひなは子供らしい笑顔で頭を悩ませている。


「ヒントはひなが好きそうな所だよ」


「私の…?…あっ!水族館でしょ!」


「せーかい」


 ひなは喜びつつも景品とやらが気になるらしい。


 ちょうどやってきた電車に乗り、空いていた席に座った。今日は人も少なく快適だ。


「あやちゃん、景品ってなんだったの?」


「景品は…」


 私はワクワクとした顔のひなの頬にキスをした。


「景品は私のキスだよ♡」


 声も出せずに真っ赤になって悶えるひなは当然可愛かった。

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