第16話

「あ、あの!田代さんってnyanbowのモデルの綾城さんだったりする?」


 nyanbowとは純恋さんの作っている雑誌、つまりは私の載っている雑誌である。そして綾城とは田代のシロと綾華のアヤを組み合わせた私のペンネームである。


「あー…そうだけど?」

「やっぱり!そうなんだ!なんか似てるなーって思って」


 私が答えると静かになっていた教室がざわつく。nyanbowは若い世代に人気な雑誌なためある程度は覚悟していたがここまでキャッキャされるとは思わなかった。


 面倒くさいなぁ…と思っているとチャイムが鳴り、先生が入ってくる。朝のSHRを終え、まだ話しかけられそうだったのでひなを連れてトイレへと入る。


「あやちゃん、一気に注目の的になっちゃたね」

「…うん。ちょっとめんどくさいや」


 ひなにそう言って思い切りハグをする。数秒間ハグをし、落ち着いたので呆けているひなの手を取り教室へと戻る。


 その後も休み時間になるたびにクラス内外の女子に話しかけられるがその度にそっけない態度で相手をしていたら6限目までには話しかけられることも減っていた。

 まだまだ廊下を歩いていると視線を感じたり、話しかけられることもあるが来週くらいには落ち着いているだろう。


 私とひなは総部員4名の新聞部に所属しているが発行が年2回のみなのでほとんど帰宅部だ。


「ねぇ、ひな。この後うち来ない?」

「うん!いいよ」


 今日はいろんな人に話しかけられて疲れている。なのでひなという癒やしを接種するべく家へ誘う。


「こないだ純恋さん…モデルの監督さんからケーキもらったんだ。ひなの好きなモンブランもあるし、一緒に食べようね」

「え!?いいの?ありがとう、あやちゃん」


 ひなったら食べ物の話をしただけなのにもう口元がゆるゆるになっているじゃない。


 私はどんな甘いお菓子よりもひなのことを食べたいな。


 そんなことを言いかけたがさすがにこれはいけないか、と自制する。しかしひなと過ごしていて我慢し続けるのも限界に近いのは事実。

 はぁ…はやくひなと身も心も結ばれたいな…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る