絡まった赤い糸

ゆー。

第1話

「おはよう!ひな!」

「おはよう、あやちゃん」


 私、田代綾華たしろあやかと彼女、浜崎日向はまざきひなたは中学生の頃からの親友である。


 ひなは親友と言われるととても嬉しそうにしており、今の関係に満足しているようだ。


 しかし、私はその反対。ひなとはもっと仲良くなりたいし、今よりもさらに関係を進めたかった。もちろん友達としてではない。


 私はひなに恋をしていた。


 出会いは中学一年生の頃。図書室のカウンターに座って本を読む姿に一目惚れしたのだ。そこからというものの何度も話しかけてやっと親友という座を手に入れた。


 ひなはおとなしい性格で、おさげ髪の文学少女であり、幼なげが残る顔とは裏腹に胸は立派だった。


 私はひなのことならなんでも知っている自信がある。愛読書、好きな作品の傾向、誕生日、血液型、趣味、好きな色、眼鏡の度、身長、体重、スリーサイズ、下着の色、身体はどこから洗うのか、使っている洗剤、寝相の悪さ、昔飼っていた金魚の名前、家具の配置、寝言……。


「あやちゃん、今日は委員会の集まりがあるんだけど…すぐに終わると思うから待ってもらってても良いかなぁ?」

「…うん!もちろん、待ってるよ」


 ひなのことを考えているとふとそんなことを言ってきた。

 ひなのことを考えていたあまり少し反応が遅れてしまった。ひなが隣にいる間はひな自身を愛でるべきだ。


 ひなは高校でも図書委員をしており、委員会の仕事中は今と違ってキリッとしていながらどこか儚げのある美少女だ。

 ひなに惚れてしまう人がいるのではないかといつもヒヤヒヤとしている。


 私はひなの手をそっと握り、さりげなく指を絡めた。ひなはこうすると顔が真っ赤になって俯いてしまう。


 こういうところを見る限り、少しは意識してくれているんだと思う。


 あぁ…やっぱりひなと私は赤い糸で結ばれているんだ♡ひなも私のこと絶対♡好きだよね?私たち、本当は両思いなんだよね♡


 ひなの指をすりすりと優しく撫でながら私は彼女に提案した。


「明後日さ、泊まりに来ない?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る