18 正義の味方1(竜堂視点)


「追い詰めた――」


 竜堂は自身の勝利を確信していた。


 東雲の能力はおそらく『爆破』に類するものだろう。

 彼の周囲で犠牲になったものは、頭部を爆弾で吹き飛ばされたような死因が多い。


 ただし、屋上で虐殺された二十七人のヤンキーについては外傷がなかった。


 あれは――脳内の一部だけを爆破したのではないだろうか。

 外からでは分からないように。


 つまり彼には――『殺し』のバリエーションがある。


「ま、バリエーションがあるのは俺も同じだ」


 竜堂はあらためて確認する。


 彼が狙ってくるのは、当然『爆破』だろう。

 射程距離がどれくらいかは分からないが、この距離で撃ってこないことを考えると、せいぜい50メートルくらいではないだろうか。


 決して長くはないが、それでも自分の【穿孔】よりは長い。


「どうやって彼の攻撃射程をかいくぐり、俺の能力を叩きこむか――」


 そこが勝負のポイントになる。


 東雲はまだ物陰から出てこない。

 何かを仕掛けるタイミングを待っているのか。

 あるいは――。


「俺が疲弊し、消耗するのを待っている……だとしたら甘いぞ」


 竜堂にとって能力者との戦闘は初めてではない。


 今までに二度経験している。

 いずれも下位天使から力を与えられ、欲望のままに能力を悪用する下種どもだった。


 だから竜堂自ら、この正義の力で制裁したのだ。


 こつ、こつ、こつ……。


 近づいてくる足音が聞こえた。


 竜堂の中で緊張感が高まっていく。


 落ち着け。

 冷静に仕留めるんだ。


 自分に言い聞かせ、前方に目を凝らす。


「来たか……何っ!?」


 現れたのは東雲ではなかった。

 ヤンキー風の風貌の男子生徒が三人並んで歩いてくる。


「なんだ、君たちは――」


 嫌な予感がする。


 その瞬間、少年の一人が竜堂に向かって突っこんできた。

 手に持っているのは、小さなナイフ。


「はははははっ! 死ねよぉっ!」

「くっ……」


 一瞬、反応が遅れる。


 鮮血が、しぶいた。

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