7 いじめっ子たちは、ひたすら俺にビビっている

「なあ、お前――田中と佐藤を殺しただろ?」


 いじめっ子三人に呼び出された俺は、いきなりそう問いかけられた。


「何言ってるんだ?」


 俺は三人をにらむ。


 柔道部に所属する強面の山田。

 成績は学年トップクラスで秀才の宮本。

 そして派手な男遊びをしていると評判のギャル成瀬。


「田中が死んだとき、俺はあいつに指一本触れなかった。周りの生徒たちもそう証言したはずだぞ」


 いざとなれば、こいつら全員をいつでも殺せる――。

 その気持ちの余裕が、俺から臆病さを消していた。


「しらばっくれるな! 佐藤だって、昨日いきなり死んだじゃないか!」

「あれは、呪い殺されたに違いねーよ!」

「そーよ、ノロイよ、ノロイ!」


 山田、宮本、成瀬の順に俺を問い詰める。


「呪い殺すとか、そんなことができるわけないだろ」


 俺は冷静にツッコんだ。

 いや、実際は呪い殺したんだけどさ。


「ぐっ……」


 三人は気圧されたように黙る。


 これがあのいじめっ子たちだと思うと、意外というか、拍子抜けだ。

 こいつら、完全に俺にビビってるな。


 今までこんな連中に俺はおびえていたのか。そう思うとバカらしくなった。


「もういいだろ。俺は帰るぜ」


 俺は踵を返す。


「待てよ!」

「まだ話は終わってねえぞ!」

「ふざけんな!」


 いじめっ子たちが俺の前に回り込む。


「どけ」


 俺は冷たく言い放つ。


「なっ……」

「くっ……」


 三人とも明らかに動揺している。

 俺は笑いそうになった。


「なあ、田中も佐藤も、俺が殺したと疑っているんだよな?」


 俺はいじめっ子たちに話しかけた。


「あ、当たり前だろ!」

「他に誰がやるっていうんだよ!」

「お前以外にいるはずがない!」


 三人は口々に言った。


「じゃあ聞くけど、お前らの中で田中と佐藤に恨みを持っている奴は?」


 俺は質問を投げかけた。


「なんだよ、それ?」


 すぐに五人とも殺してしまっては面白くない。


 こいつらは簡単には殺さない。

 まずは、彼らを疑心暗鬼にさせて楽しむことにした。


「ジワジワ苦しめてやる……」


 小さくつぶやく俺、


 田中や佐藤のことは、いきなり殺してしまって、ちょっと後悔していた。

 だから――残りの三人に関しては、もう少しじっくりといく。


「俺を疑う前に、もっと他に疑うべき奴がいるんじゃないのか? 知ってるんだぜ、俺は――」


 思わせぶりなことを言ってみる。


 普段ならともかく、仲間が立て続けに二人死んでいる――殺されている、という状況で、事件にかかわりがありそうな俺からの言葉は、想像以上に彼らに利いたようだ。


「ま、まさか……」

「本当に俺らの誰かが犯人……?」

「あ、あたしじゃないわよ……!?」


 いじめっ子たちは震えだす。


「どうしたんだ? そんな怯えた顔をして」


 俺はわざといじめっ子たちを挑発する。


「俺は毎日、お前らにいじめられながら、おびえて登校していた。お前らも少しは味わってみるといい。怯える毎日ってやつを」


 いじめっ子たちの顔色は青ざめている。


「お前らの中の誰かがやったんだ――俺はそれを知っている」

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