8 俺はいじめっ子たちに揺さぶりをかける

 シン、とその場が静まり返った。


「俺らの中に犯人がいる……?」

「お、おい、デタラメ言うなよ――」

「はあ? あんた、何言ってんのよ!?」


 三人は明らかに動揺していた。


「そうだな、今から一週間後に教えてやろう」


 俺は奴らを順番に見つめる。


 とにかく堂々と、自信に満ちた態度を取ることだ。

 その態度が、奴らの疑心を増幅させる。


『東雲は真実を告げているのか……!?』


 彼らの表情を見るに、十分にそんな疑心を植え付けられたようだ。

 いずれ種明かしはしてやるが、それまでせいぜい怯えているがいい。


「う、嘘だろ」

「ま、まじかよ……。俺たちの中に犯人がいたなんて……」

「や、やめてよ、そういうこと言うの……」


 三人は完全にパニック状態になっている。


「安心しろ――お前ら次第で、一人だけは助かるように仕向けてやる」


 俺はニヤニヤと笑っていた。


 これで彼らの仲は分断されるだろうか。

 彼らの関係がどう変わっていくのか、楽しみだ。




 三人は俺をにらみつけながら、去っていった。


「あいつら、ビビりまくってたな……くっくっく」


 俺はその場に残り、一人で含み笑いを漏らしている。


 笑いが止まらない、とはこのことだろう。


 他者を攻撃する、というのは快感なんだな。

 あいつらが俺を毎日いじめても飽きなかったのも、こういう気持ちを味わっていたからだろうか。


 もちろん、俺と奴らの行為の本質は違う。


 奴らは『娯楽』のために、何の罪も犯していない俺を一方的に攻撃した。

 集団で、卑劣に攻撃した。


 だが、俺が奴らにしているのは『報復』だ。

 俺の尊厳を傷つけ続けた奴らに、報いを受けさせているのだ。


 だから俺の心は痛まない。

 喜びに満ちている。


 奴らが傷つけば傷つくほどに。

 奴らが怯えれば怯えるほどに。


 そして、最後には奴ら全員に死の報いを与えることを想像するたびに。


 俺の気持ちは喜びと幸せに満ち溢れる――。

 と、


「あ、まだいた……よかった!」


 成瀬が俺の元にやってきた。

 一人で戻って来たらしい。


「ね、ねえ、ちょっといい?」


 体をくねらせ、科を作りながら成瀬が俺に語り掛ける。


「なんだ?」

「あの……ヤ、ヤらせてあげるから、あたしには何もしないでね。他の二人はどうでもいいし、あたしだけは助けて、お願い」

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