14 杏の提案

「ねえ、殺さないでね? あたし、なんでもするから? ね? ね?」

「お前が俺を満足させているうちは殺さない、って約束してやるよ」

「よかった……あ、そ、そうだ、他にも可愛い女の子、紹介しようか? あたしが言えば、きっと東雲にヤらせてくれるよ?」


 言ってから、成瀬はハッと気づいたように、


「あ、ううん、成瀬に喜んで、その、エッチしてもらうと思う」

「向こうがその気なら、俺は大歓迎だけどな」


 俺は成瀬をにらんだ。


「無理強いしてエッチさせるのは、ちょっとな。もしそんなことがあったら、どうなるか――分かってるよな?」

「っ……! む、無理強いなんてさせないって! 自分からあんたに抱かれたい、って女の子がいたら紹介するね? ね?」

「ああ、それなら問題ない」


 言って、俺はニヤニヤと成瀬を見た。


「ま、とりあえず今日のところはお前の体を味わわせてもらうからな」

「う、うん、東雲くんの好きにしていいよ?」


 言いながら、成瀬は前かがみになり、胸の谷間を見せつけてきた。


 美味しそうなカラダだ――。

 俺はますます欲望を募らせたのだった。




 俺は一時間以上、成瀬の体を楽しませてもらった。


 屋上でヤッたんだけど、誰かがやって来るリスクだってないわけじゃないから、今一つ落ち着かない。

 まあ、そのスリルがいい、という考えもあるんだけど――。


 どうせなら、もう少し落ち着ける場所で成瀬の体の隅々まで味わいたいもんだ。

 性格は最悪だが、顔と体は一級品だからな、成瀬は。

 飽きるまで貪りつくして、その後は――。


 まあ、今までのことを考えると、最終的には殺しておくか。

 そのときまでに情が移っていたら、生かしてやらないこともないけど……まあ、そのときに考えよう。


 で、その日の、帰り道。


『なかなか有意義に「力」を使ってるんじゃねーか?』


 帰宅路で突然声が響いた。


 同時に、周囲から音が消える。

 さらに色彩が消え、白と黒だけのモノクロームの世界へと変貌した。


「これは――」

『二人きりで話したいから、ちょっと時間を止めさせてもらったよ』

「お前は――」


 光とともに、一人の人物が出現する。


 俺に力を与えてくれた少年だ。


 殺戮の神、エルギアス――。


『天界から見ていたよ。すでに二人殺して、さらに一人には【強制】を付加していたね』

「……何の用だ」


 俺は反射的に身構えた。


 嫌な予感がした。


 俺はこいつにもらった力で、人を殺している。

 エルギアスには『力を好きに使えばいい』と言われたけど、実際に人を殺した俺を見て、こいつが『罰を与えに来た』という展開もあり得る。


 理不尽だけど、な。


『警戒しないでくれ。君を罰したりなんてしねーよ』


 エルギアスが爽やかに笑う。


『たとえ、その力で何百人、いや何千人……いや数万数億殺そうとも、僕は関与しないよ。与えた後の力をどう使うと、君の自由さ』

「……いくらなんでも、そんなに殺したりしない」

『どうかな? 「強大な力」を行使するというのは、すさまじい依存性があるんだよ? 僕は過去に何度も見てきた。神々や天使に与えられた力を振るいながら、その力に呑まれていった者たちを』


 神々や天使に与えられた力……か。


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