6 悪魔による虐殺

「『殺し合い』? 舐めてんのか、ゴルァ!」


 ヤンキーの一人が威嚇した。


「テメェが俺らに殺されるだけなんだよ」

「運が悪かったなぁ、はは」


 他のヤンキーたちも笑っている。


 そこにあるのは暴力に対する喜びの笑み。

 この世に生きていてはいけない類の――クズどもだ。


『撲殺』を使うか。

 いや、ここは――。


「やれ、悪魔C」


 俺の護衛役としての任務を全うさせることにする。

 それに、奴の戦いぶりを見ておきたい。


「了解だ」


 俺の前に出る悪魔C。


「どうせ、お前らが生きていても社会の害悪にしかならない。せいぜい俺の役に立って死ね」


 俺はニヤリと笑う。


 こいつらの命はすべて――遠慮なく『悪魔』の実戦訓練に使わせてもらおう。


「お前らのおかげで貴重な実戦データを取れる。先に礼を言っておくよ――ありがとう、クズども」

「ハア? クズだと、ゴルァ!」

「いいから死ねや!」


 ヤンキーの一人が殴りかかってきた。


「ぐあっ!?」


 そいつは悪魔の拳を受けて、十メートルほど吹き飛ばされる。


 地面にたたきつけられ、そのまま動かなくなった。

 当然、即死だ。


「さすがに身体能力が高いな」


 俺は満足する。

 人間を圧倒的に上回ってるらしい。


「他の連中も全員殺せ」


 俺は悪魔Cに命じた。


 そして、悪魔によるヤンキー虐殺が始まった。


    ※


 SIDE ヤンキー三田



(くそ、なんでこんなことに――)


 三田さんだ豪弾ごうだんは内心で激怒していた。


 今日もいつも通り他のヤンキー仲間たちと高架橋下のコンビニでたむろしていた。


 すると駐車場の奥の方でタバコを吸っていると、ちょうど一人のサラリーマンが通りがかった。


 彼はこちらをチラリと見て、わずかに顔をしかめた……ように見えた。

 それが気に食わなかったのだろう、仲間の一人がサラリーマンに突っかかっていった。


 あとは流れで全員が立ち上がり、サラリーマンを取り囲み、殴る蹴るの一方的な暴力を振るった――とここまでは時々ある話だ。


 だが打ちどころが悪かったのか、そのサラリーマンは気が付くと動かなくなっていた。


「お、おい、どうする……?」

「死んでねーか、こいつ?」

「マジで殺すのはまずいだろ」

「だ、誰も見てなさそうだし、このまま逃げようぜ」

「だな」


 三田たちは一目散に逃げだした。


 近所の公園で一息ついていると、今度は高校生らしき少年が現れた。




「やれ、悪魔C」


 そいつが言うと、彼の背後で不気味な気配が膨れ上がった。


 姿は見えない。

 けれど、そこには何かが息づいていた。


 彼は『悪魔』と言っていたが――。


「いいから死ねや!」


 仲間の一人が少年に殴りかかろうと突進する。


「ぐあっ!?」


 次の瞬間、そいつは目に見えないパンチでも受けたかのように吹き飛んだ。


 十メートルほど飛ばされ、地面にたたきつけられ、そのまま動かなくなる――。






***

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