7 生存者の末路1

池沢いけざわ!?」


 三田が叫んだ。


 彼――池沢の両手足、そして首が異様な方向にねじ曲がっている。

 おそらく即死だろう。


「ひ、ひいい……」


 生まれて初めて直接目にする、人の死――。


 それも『殺人』だ。


「う、うわぁぁぁぁぁっ!?」


 たちまち三田たちは恐慌をきたした。


 ごうっ!


 と、空中に炎の弾が現れ、突き進む。


 仲間の一人に命中し、そいつは火だるまになった。


「ぎゃぁぁぁぁ、あづ……た、たすけ……ぁぁぁ……」


 悲鳴を上げながら、やがてそいつは完全に炭化した。


「な、なんだよ、これ……!?」


 三田はうめいた。


 圧倒的な恐怖がすべての感情を塗りつぶしていく。

 さらにもう一人が大きく吹き飛ばされた。


 池沢と同じく首や両手足が折れ曲がるほどの衝撃で即死する。

 残るは、三田も含めて五人――。


「ひ、ひいっ、なんだよ、こいつぅぅぅっ!?」


 三田は恐怖の絶叫を上げた。


 化け物――。

 現代社会に、こんなモンスターがいるはずがない。


 だが、そいつは現実に動き、息づき、仲間を殺していく。

 勝てる相手ではない、というのはすぐに分かった。


 身体能力からして、人間とはまったく違う。

 さらに得体のしれない力まで操ってくる。


 魔法――だろうか?

 奴は見た目通り、まさに『悪魔』なのか……!?


(逃げるしかねぇ! なんとか俺だけでも……!)


 仲間と一緒に助かろうという発想は薄かった。


 別に彼らが全滅しても構わない。

 自分だけは生き残りたかった。


「そうだ、あいつらを盾にして――」


 三田は生き残るために――生き残るためだけに、頭脳をフル回転させる。


 生まれてこの方、これほど真剣に何かを考えたことはなかっただろう。

 今までは気分の赴くままに暴力を振るい、深く考えることもなく、ただ仲間とつるみ、刹那的な快楽や感情のままに生きてきた。


 今も、そうだ。


 自分が生き残るために、他者を利用する。

 他者を――捨て駒にする。


「よし……悪く思うなよ、お前ら!」


 三田は仲間の一人の背後に回り、思いっきり蹴り飛ばした。


「う、うわっ……」


 前方につんのめる仲間。

 見えない『悪魔』がいると思しき方向に――。


「ぐあっ!?」


 予想通り、そいつは頭部を雷撃で黒焦げにされた。


 その間に三田は全速力で走り出している。


 他の者たちを振り返らず、とにかくその場から全速で離脱する――。







***

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