8 生存者の末路2

「ぎゃあっ……」

「うあああっ……」


 背後から悲鳴が聞こえてくる。


 いち早く逃げ出したのは、結果的に大正解だったようだ。


 逃げ遅れた残り三人も立て続けに『悪魔』に殺されている――らしい。


 振り返ることでスピードを落とす愚は犯さず、三田は仲間の様子などまったく見ずに、ひたすら走り続けた。

 そして――。


「こ、ここまで来れば――」


 人通りの多い場所に出た。


 周囲には、何人かの通行人が見える。

 これはカンだが、あの少年や『悪魔』は人目を避けて行動している気がした。


 こうして大勢の目がある場所に来れば、攻撃してこないはずだ。


「はあ、はあ、はあ……や、やったぞ!」


 三田は息も絶え絶えに快哉を叫んだ。


 どうにかあの『悪魔』から逃げることができた。


 今はただ、自分が生きていることが嬉しい。


 生きられることに感謝していた。

 圧倒的なまでの感謝だった。


 彼はさらに歩いていく。


 と――、


「記録56――【幻影】」


 そんな声が響き、不意に周囲の光景が一変した。

 雑踏の中を歩いていたはずなのに、いつの間にかさびれた路地裏にいる。


「おもしれー気配をまとってるじゃん、お前」


 前方から一人の少年が歩いてくる。


 爽やかな美少年といった面持ち。

 だがその瞳はゾッとするほど濁っていた。


「『悪魔』か……? それに【殺人】の能力を食らってるな。【呪殺】……か、なるほど」


 少年は三田を値踏みするように見つめる。


 ぞくり、とした。

 今の言葉からして、この少年はさっきの『悪魔』のことを知っている。


 ならば、この少年もまたなんらかの超常の力を持っているのだろうか。


「ひいいっ、もう勘弁してくれ……」


 三田は泣き出した。


「なんで俺がこんな目に遭うんだよ……俺、何もしてねーじゃん……」

「ん? 罪もない者を殺したんだろ、お前」


 少年が鼻を鳴らした。


「お前の記憶映像から全部分かるぞ。僕には、お前の罪が」

「つ、罪って……」

「ま、お前の罪なんてどうでもいーや。僕が興味あるのは『悪魔』の情報――その気配を『記録』させてもらうぞ」

「な、何言って……?」


 少年が三田に何かをしようとしている。

 さらに恐怖感がたかった。


「幻想体ザストエル、出ろ」


 少年の背後に異形のシルエットが浮かび上がった。


 映画の撮影などに使うビデオカメラ――それに手足が生えたような姿である。


「そいつの一部を『撮影』し、『記録』しろ。そいつ自身は破棄していい」


 少年の声音は冷たかった。


『撮影』や『記録』とはなんなのか。


 そして――『破棄』とは?


 嫌な予感がした。


 不吉な予感が止まらなかった。

 次の瞬間、


「ぐああああああああああああああああああああっ!?」


 全身に激痛が走り抜ける。


「あ……が……あぁぁぁぁっ……」

「ははは、ちょっと痛いかな。ま、我慢してくれよ。僕のコレクションがこれで一つ増える。ふふ」


 少年は三田が苦しむ様子を楽しげに見つめていた。


 信じられないほど無邪気な笑顔だった。


 彼には他者の痛みなど、何も感じないのだろうと思わせるほどの――。


 ――数分後、三田の意識は完全に霧散した。


    ※


「ザストエル、そいつの死体は適当に始末しておけ」


 彼は足元に横たわる三田の死体を見下ろし、言った。

 すでに彼の『記憶』はすべてコピーし、必要な部分を『保存』してある。


 どうやら彼の――そして彼らのターゲットと三田は接触していたようだ。


 おかげで貴重な情報を得られた。


「お前の記憶は有効活用させてもらうよ、三田くん。まあ、せいぜい安らかに眠れよ、ははは」







***

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