9 学園にて


 俺は『悪魔』を使って、ヤンキーたちを処刑した。

 一人だけ逃げたやつがいるが、俺の方で『呪殺』を使っておいたから問題はないだろう。

 と、


「礼を言うぞ、マスター」


 悪魔Cが言った。


 その声に喜びの色がにじんでいるように思えた。


「もしかして……暴力の喜び、みたいなやつか?」

「それもある。が、それは些細なことだ」


 と、悪魔C。


「あの少年たちを殺し、『魂』を食らうことができた。大した美味ではないが――ひさびさに味わった人間の『魂』はそれなりに満足だ」

「魂……?」

「我らは『魂』を食らい、『力』を得る。封印されていた間は『魂』を得ることができなかったからな」


 悪魔Cが息をついた。


「魂って……そういえば、俺の魂も狙ってるようなことを言ってたな」

「マスターが死んだときは、な」


 言って、悪魔Cが笑った。


 それは――俺が初めて目にする喜悦にあふれた笑顔。


「神の力を持つ者の魂……その味わいを想像するだけで心が躍るぞ」


 ゾッとしない話だった。


 悪魔たちは頼もしい味方ではあるが、やはり気を許せるような相手ではない。

 絶対に――。


「そうだ、他の能力者を殺したときに、その魂をお前たちに食わせればいいのか?」


 俺はふと思った。


「そうすれば、お前たちはもっと強くなる、ってことか?」

「その通り。能力者との戦いは我らとしても期待しているし、望むところでもある」


 利害一致ってわけだな。


 ま、当面こいつらは頼もしい味方だ。

 今はせいぜい有効活用させてもらう。


 そして、いつか悪魔たちと敵対するときが来たら――。


 そのときは、容赦なく殺す。


 相手が天使だろうと悪魔だろうと、関係ない。


 俺は、俺の邪魔になる者も、俺を不快にする者も、俺を害しようとする者もすべて――。


 殺して、殺して、殺して、殺して、殺し尽くす。




 翌日の学園。

 登校するなり、一人の男子生徒が俺がいる教室を訪ねてきた。


「あいつは――」


 確か松本って奴だ。


 頭脳明晰、スポーツ万能、実家も大金持ちとかいう、まるでアニメか漫画のキャラクターみたいな男子生徒だった。


 天は二物も三物も与える、か。


「ま、俺はこの能力一つで十分だ」


 ニヤリと笑う。


 どんな相手だろうと念じるだけで殺せるチート能力。


 これがある限り、俺は気に入らない奴を誰でも始末できる。

 ノンストレスな人生が約束されたようなものだ――と考えるのは、さすがに早計か。


 ま、実社会ってやつに出れば、殺人チートがあってもどうにもならない問題にも直面するのかな。


 会社員になれば多分そうだろう。

 上司や取引先が気に入らないからって無差別に殺すわけにはいかない。


 なら――勤め人ではなく、この能力を活かして大儲けする方法を考える、か。


 それが具体的にどんな方法はか分からないけど。

 せっかくの能力をもっと色々と活かしたいもんだ。


 俺の、快適で幸せな人生のために――。







***

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