15 殺人犯を探す少年1(竜堂視点)

「く、くっそぉぉぉぉぉっ!」


 男は怒声を上げながら襲い掛かってきた。

 その手には黄金に輝く剣がある。


 物質ではない。

 エネルギーが剣の形になったものだ。


 いわば『光の剣』。

 あらゆるものを切り裂くであろうその斬撃を、竜堂は紙一重で見切って避けた。


 超人的な反応速度だ。


 ちりっ……!


 大気が焼け、衝撃波が吹き荒れるが、竜堂はすでにその範囲内から逃れている。


「なんて動きだ……バケモンが……」

「『天使』から与えられた力を使いこなせば、これくらいは造作もないさ。俺は君と違って修練を積んできた――」


 告げて、竜堂は男に拳を繰り出した。


「ぐはっ……」


 まともに食らって吹っ飛ばされる男。


 動きが遅い。

 竜堂と違い、彼は『天使』から授かった力をロクに扱えていないようだ。


 恐れるべきは彼の固有能力である『光の剣』の攻撃力だけ。

 それも、竜堂の超人的な動きの前には、まったく当たらない。


「俺の勝ちだ――」


 一瞬で男の背後に移動した。


「ひ、ひい……助け……」

「駄目だ。君は『力』を悪用している。被害に遭った人間が何人もいるんだ」


 竜堂は冷たく言い放った。


 指先がじわりと熱くなる。

『力』を集中する感覚。


 これでいつでも『発射』できる。


「ここで始末する――社会正義のために」

「く、くっそぉぉぉぉっ、殺されてたまるかっ!」


 男は高速で離脱しようとしたが、竜堂は余裕でその動きに追随し、背後にぴったりとついていた。


「無駄だ。俺の力は上位天使から授かったもの。下位天使の君の力では――」


 ざぐぅぅぅっ!


 男の胸にドリルでえぐられたような傷が出現する。

 傷口から大量の血を吹き出し、彼は倒れた。 

 即死だ。


「さて、と。こいつは小物だ。早く『本命』の方を探さないとな」


 竜堂がつぶやく。


「『神』から力を授かった人間……それも殺戮の神エルギアスから――」


 そいつは、この町のどこかにいるはずだ――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る