14 翌日の学校で


 翌朝、ネットニュースを検索していると、ホテルで首なし死体が発見――という見出しが目に入った。


 読んでみると、市内のラブホテルの一室で男の首なし死体が発見された、とある。


 年齢などから見て、間違いなく鈴木さんに痴漢していた男だろう。


 登校して席に座ると、隣で鈴木さんが予習をしていた。

 真面目だ。


「鈴木さん、痴漢からは解放された?」


 俺は彼女に小声で耳打ちした。


「……!」


 鈴木さんは一瞬、表情をこわばらせた。


「ん、どうかした?」

「い、いえ、今日はその人、たぶん電車に乗ってなかったと思う……」

「そっか」


 俺は小さく微笑んだ。


「よかったよ。心配してたんだ」

「東雲くん、気遣ってくれてありがとう」


 鈴木さんが礼を言った。


「あなたに相談して、なんだか気分が軽くなった」

「俺でよければ、いつでも話を聞くから」

「えへへ、優しいね」


 はにかんだような笑顔が可愛らしい。

 思わずときめいてしまう。


「鈴木さんが心配なだけだよ」


 俺はにっこり笑った。


 優しい……か。


 俺がこの力を使って、すでに何十人も殺している男だと知ったら――。

 鈴木さんはどう思うだろうか。


 痴漢がすでに死んでいることを、鈴木さんが気づくことはないだろう。


『ホテルで首なし死体が発見された』というネットニュースを目にすることはあるかもしれないが、その男が自分に痴漢していた人物だと結びつけることは不可能に等しい。


 ま、今後彼女が奴から痴漢被害に遭うことはないんだし、とりあえずは一件落着だ。




 そして放課後。


「ちょっと話があるんだけど、東雲くん」


 成瀬が話しかけてきた。


「なんだ?」

「ここではちょっと……」

「じゃあ、また屋上に行くか」


 俺は彼女とともに屋上に向かう。


 成瀬の友人らしき女子生徒たちが、俺と彼女の組み合わせを見て、驚いた顔をする。

 付き合っているとでも誤解されたんだろうか。


 ま、どうでもいいが……。


「あのね。この間の件、あなたに紹介できる女の子が何人かいるから――」


 屋上に着いたとたん、成瀬がそう切り出した。


 ああ、そう言えば新たにセフレになりそうな女がいればいいな、と軽い気持ちで彼女に依頼してたんだった。


 けど、あらためて考えると、成瀬から無理強いされて俺にセフレとしてあてがわれる可能性もあるわけだ。

 自分から進んで股を開くような女ならともかく、そういうのはさすがに御免こうむる。


 キチンと見極めないとな――。


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