16 殺人犯を探す少年2(竜堂視点)


「ここ最近、学校の内外で殺人の件数が異様に増えている――」


 翌日、登校した竜堂は学内の廊下を歩きながら、ひとりつぶやいていた。


 発端は、学内で田中という生徒が謎の死を遂げたこと。

 授業中にいきなり頭が吹き飛んで死んだのだという。


 当然、自然死ではありえない。

 だが、犯人は見つからなかったという。


 大勢の教師や生徒の前で、誰の手も触れずに頭を吹っ飛ばされた被害者。

 爆薬の類も見つかっておらず、一体何が原因で彼の頭がまるで爆弾で破壊されたようになったのか……警察にもお手上げなのだそうだ。


「――なんらかの能力、と考えるのが妥当か」


 竜堂と同じく『天使』の力を授かった人間か、あるいは敵対者である『竜』の力を授かった人間か。

『悪魔』に関しては現状で地獄に封印されているはずだし、後は――。


「『神』の力……」


 最上位の存在である『神』の力は、竜堂の『天使の力』をもはるかに凌ぐはずだ。


 そんな人間が、自由に力を振るい、気持ちの赴くままに殺人を行っているとしたら。


「早く犯人を見つけないと……」


 そう思って独自で捜査を繰り返し、やがて一人の男子生徒にたどり着いた。




 怪しいのは東雲涼介だ――。




 竜堂はそう確信していた。


 隣のクラスの東雲が周囲にいじめられていたことは、調査がついている。

 田中たちの死は、その報復だろう。


「そう、動機は――はっきりしているんだ。だけど方法が分からない」


 竜堂が独り言をつぶやくと、傍らを歩いていた友人たちがこちらを見た。


「ん? なんだよ」

「おい、大丈夫なのか?」

「なにをブツブツ言ってるんだ、お前は」


 どうも考えを口に出していたようだ。


 気をつけなければ。


 ……にしても、田中たちのいじめへの仕返し殺人とするならば、東雲の行動はあまりにも不可解な点が多い。


(彼に話を訊いてみる必要がありそうだな……)






次回から第3章になります。ここまで読んでいただきありがとうございました!

***

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