2 能力者たち2

「若者は精力旺盛だな」


 老人――権藤ごんどうが笑う。


「彼が特別旺盛なのよ。ほんと、猿みたい」

「あ、ひでーな」


 栞が眉をひそめると、松本が抗議した。


「ま、それはそれとして――東雲とやらは『殺戮の神』から力を授かっているそうじゃないか」


 権藤が言った。


「『神使い』を打倒する機会ではある。ワシら全員の力で東雲を殺し、誰かがその力を奪い去るのだ――」


 謳うように告げる。


「神の力……か。ゾクゾクするねぇ。あ、奪い合いって勝っても負けても恨みっこなしだよね、じっちゃん」

「無論」


 松本の言葉に権藤は深くうなずいた。


 その眼光が鋭くなり、松本を射抜く。


『仲間』を見る目つきではない。

 それは『競争相手』を威嚇する視線だった。


「我らは別に友人同士というわけではない。あくまでも自分たちの生存確率を高め、より有利に戦いを進めるために同盟を組んでいるだけだ」


 同盟――。

 そう、自分たちの関係はその言葉がふさわしい。


 権藤は栞の方を見た。


「栞、お前は東雲から情報を得るんだ。いいな?」

「……当然よ。彼に従っているのも、今だけの話」


 栞が老人に言った。


「この私に屈辱を与えた報いを必ず受けさせてやるわ」

「なら、いい」

「私は引き続き【氷竜眼】で監視を続けますね」


 と、文香が言った。


「頼りにしているぞ」

「文香さんの『眼』の能力は本当に便利だからなー……あ、それはそれとして、今度ヤらせて?」

「ふふ、気が向いたら……ね?」


 松本の誘いに蠱惑的な笑みを返す文香。


 清楚な外見とは裏腹に、彼女はかなり男性経験が豊富らしい。

 肉欲にまみれた生活を送っている、と本人から少し聞いたことがある。


 立場も、性格も、能力も――すべてがバラバラの四人。


 この四人で『神の力』を持つ東雲涼介を討つ。


 それが彼女たちの共通認識だった。





***

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