9 能力者、竜堂


「さあ、あらためて質問だ。君は俺と同じく『超存在』から『力』を授かった能力者――ということでいいんだね?」

「いきなり言われても、なんの話か分からないな」

「さっき『力』の発動を感知したんだ。場所は付近のコンビニエンスストア。発動の中心点には君がいた」

「『力』の発動……?」


 同じ能力者にはそういうものを感知する力があるのか?

 あるいは、こいつ独自の力か?


「俺の能力は『天使』に由来しているからね。感知能力が特に高い。君が『力』を持っていることは明らかだ」


 と、竜堂。


「学校で起きた大量殺人では、そこまで確定できなかったが――さっきのコンビニの事件でまず間違いないところまで絞ることができた」

「っ……!」


 俺は息をのんだ。


 学校でいじめっ子やヤンキー、体育教師を殺した時点で、すでに怪しまれていた……ということか。


【殺人チート】は絶対にバレない無敵の力だと思っていた。

 が、それを嗅ぎつける奴が存在したんだ。


 こいつは――始末しなければ。


 俺の中で静かに、冷たく、殺意が持ち上がる。


 とはいえ、こいつもなんらかの能力を持っているはず。

 ことは慎重に運ばなければならない。


「あ、ああ、実を言うとそうなんだ。今までこんな力を持ったことが不安で……」


 俺は竜堂に向かって声を震わせた。


「学校で『力』を使ったのも、上手くコントロールできなかったからだ。もし君が『力』のコントロールに長けているなら、俺にも教えてくれないか?」


 まずは――こいつとの距離を縮めるんだ。


「……なるほど。君が無差別大量殺人者だという考えて調査を進めていたが、『力』が制御不能だったわけか」


 竜堂がうなる。


 お、意外に簡単にだまされるもんだな。

 たぶん、人がいいんだろう。


 実際、竜堂は見るからに善良そうな雰囲気をしている。


 このまま上手く騙せるか――。



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