10 懐柔か、敵対か


「お前は校内で起きた死亡事故を調査しているのか」

「事故……か」

「ああ、事故さ」


 俺はうつむき、できるだけ沈痛な表情を浮かべてみせた。


 とにかく、こちらが必殺の攻撃を叩きこめる状況になるまで――相手の気持ちのガードを緩めなければならない。


「先日、田中が頭部を爆破されたような状態で死亡した。次に佐藤が病死。そして先日は屋上で二十人以上の男子生徒が頭部を失い、死亡――」


 竜堂が淡々と告げる。


「これはすべて君の仕業、と考えていいんだな」

「ああ……『力』が暴走したんだ。どうしようもなかった」


 俺は首を左右に振る。

 大仰にため息をついてみせる。


「確かに『力』の制御は簡単じゃない。俺だって自分の『力』をコントロールできるようになるまで、随分とかかった」

「お前にはどんな力があるんだ?」


 俺はさりげなくたずねた。


「よかったら見せてくれないか。自分以外の能力に興味がある」

「『力』か……」

「ああ、俺の『力』を制御するためのヒントを得られるかもしれない」

「なるほど……なら、見せよう」


 お、本当にこいつは人がいいんだな。


「少しでも君の助けになればいいけど」

「助かるよ、竜堂」

「いや……少し離れていてくれ、東雲くん」


 竜堂が構えた。


「おおおっ……!」



 小さな気合いの声。


 ヴ……ンッ……!


 同時に、奴の背後に身長二メートルくらいの人型のシルエットが出現した。


 銀色の棒を組み合わせたようなデザイン。

 頭部には輪が、背中からは翼らしきものが生えている。


「な、なんだ、それ……?」

「ん? 君は『幻想体ヴィジョン』を出せないのか?」


 東雲が首をかしげる。


「これは俺に力を与えてくれた天使――その分身だよ。俺は『幻想体』と呼んでいる」


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