11 幻想体セリューエル


「俺は上位天使『セリューエル』から力を授けられた。能力は――」


 右手を突き出す。


 どごぉっ……!


 地面が弾けた。


「これは……」

「【穿孔せんこう】と呼んでいる。文字通り対象に『穴を穿つ』力――まあ、見えないドリルを飛ばす能力って言うと分かりやすいかな」


 解説する竜堂。


 俺は内心でほくそ笑んでいた。

 自分の手の内を一方的に話してくれるとはありがたい。


 これで戦闘になったときに優位に進められるだろう。


 だが、まだ情報が足りない。

 使用制限や射程なんかも聞き出しておきたい。


「へえ、こんなのが出せるのか! すごいな!」


 俺は素直に感心しているような態度を見せた。


『竜堂、彼は敵対者か?』


 突然、竜堂の背後で銀色の天使――『幻想体』が言葉を発した。

 こいつ、しゃべれるのか。


「いや、そう判断するには早いよ、セリューエル」


 答える竜堂。


「まだ出会ったばかりで情報が不足している。ただ、彼はおそらく自分の『力』の制御ができず、今までの殺人に関しても事故だと主張している」

『事故……?』


 セリューエルが俺を見つめた。


 幾何学的なデザインの顔には、なんの表情も浮かんでいない。

 そもそも表情が変化するのか、感情の類を持っているのかさえ、分からない。


 上位天使……か。


 俺の前に現れたエルギアスは、普通の人間のような姿をしていたのに。


 天使は全然違う姿をしている。

 あるいは幻想体とやらを呼び出せば、エルギアスもこんな姿で現れるのか。


 まだまだ分からないことだらけだった。


「その幻想体っていうのは、俺も出せるのか?」


 俺は竜堂にたずねた。


「ああ、コツさえつかめば出せると思う」

「教えてくれないか」


 俺は身を乗り出した。


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