28 帰路に出現したもの3
俺は驚いて扉の前まで行く。
一体、この向こうに何があるんだろう?
「このまま開けられるか……?」
扉の縁に手をかけてみた。
押したり引っ張ったりしてみたが、扉はビクともしなかった。
わずかに開いた状態で固定されているようだ。
開いた隙間から光が漏れている。
「向こう側に何が……見えるか……?」
見てはいけない、という本能的な恐怖がこみ上げた。
同時に、
「見てみたい……」
恐怖を上回るほどの衝動もこみ上げる。
俺は恐る恐る、隙間に顔を近づけた。
「うっ……」
まぶしい。
あふれる光で、向こう側に何があるのか見えない。
――こちらへ。
声が、聞こえた気がした。
男のようにも、女のようにも聞こえる中性的な声。
誰かがそこにいる。
――早く、こちらへ。
俺は扉をさらに開けて、向こうに行こうとした。
が、やはり扉はそれ以上開かない。
力を込めて何度か試したが、結果は同じだった。
俺が通れるほどの隙間は空かなかった。
――まだ、来られませんか。
――いずれは、きっと。
――待って、いますよ。
「誰だ……?」
呼びかけるが、答えはない。
けれど、確かに今のは『声』だった。
なんらかの意思を持つ存在。
エルギアスとは、違う。
もっと別の――もしかしたら、もっと高位の存在が。
扉の向こうに、たたずんでいる――。
***
次回から4章になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!
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