4 夜の事件
夜に出かける前に時間があったため、俺は先日セフレとしてゲットした高子を呼び出した。
成瀬を呼び出すという選択肢もあるんだけど、俺としてはまだ一度しかセックスしていない高子の方が新鮮味があったのだ。
人妻を寝取る背徳感もゾクゾクして興奮する。
待ち合わせ場所に指定したのは、俺の家と高子の家のちょうど中間地点くらいの距離にあるラブホだ。
高子は既婚者だから、旦那にバレないようにできるだけ短時間で情事を済ませる必要があるはずだ。
だから、彼女の家からほど近いラブホは使い勝手がいい。
今後も彼女との逢瀬にはここを利用するとしよう。
まあ、こいつの体に飽きるまでの間だけだが――。
高子に会うと、ほとんど無言で俺たちはラブホに入った。
シャワーを浴び、二回ほど抱いた。
前回は嫌そうなそぶりも見せた彼女だが、今回はむしろ積極的だ。
ある程度の心の整理をつけ、この関係を割り切るようになったらしい。
「はあ、はあ……もう、激しすぎよ……」
終わった直後、高子は目をトロンとさせて言った。
俺に顔を寄せ、軽く唇を合わせる。
すっかり恋人同士みたいな甘い雰囲気が流れた。
強引に始めた関係だが、向こうも案外まんざらでもないんだろうか。
「……ま、欲求不満の解消にはなるからね」
唇を離すと高子が微笑んだ。
「旦那とするより気持ちいいかも」
「そりゃどうも」
俺としては自分の性欲解消になれば、それでいいんだけど。
「っていうか、罪悪感はないのか? 俺が言うのもなんだが……」
「そりゃ、ないわけじゃないけど……向こうは仕事仕事であたしのことなんて構ってくれないし」
高子がため息をついた。
「あたしだって……寂しくなることはあるからね。こんなふうに激しく求められるのは、悪い気分じゃないな、って思ったの」
「……そっか」
俺は内心でほくそ笑んだ。
当面、この関係を続けていけそうだ。
文字通りの都合のいい女になってくれそうだった。
高子と別れた後、俺は電車に乗り、二つ先の駅で降りた。
この地区のヤンキーは駅の最寄りにある高架橋下のコンビニがたまり場だと情報を事前に得ている。
歩いて数分でたどり着いたとたん。
「ぐあっ……」
くぐもった悲鳴がかすかに聞こえた。
罵声や怒声がそれに混じる。
これは――ケンカか?
あるいは誰かが一方的に痛めつけられているのか。
「様子を見てくるんだ」
悪魔Aに命じた。
悪魔Cは引き続き俺の護衛に専念させる。
悪魔Aは声の出所――コンビニの裏手まで飛んでいき、しばらくして戻ってきた。
「どうやら殺人事件のようだな」
***
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