18 いじめっ子はおびえ始める1(山田視点)


 放課後の教室で一組の男女が体を重ねている。


 女は壁に手をついて尻を突き出し、男はその尻を抱えた状態で動きを止めていた。


「はあ、はあ、はあ……」


 彼――山田は快感の余韻に浸っていた。


「えっ、もう終わり?」


 振り返った女――数学を担当する川本教諭がガッカリした顔でたずねる。


「うるせーな、今日は気分が乗らないんだよ……っ」


 こらえきれずにあっさり射精してしまった気まずさを誤魔化すように、木村は吐き捨てた。


「もっと楽しませてよ、もう……自分だけさっさと気持ちよくなっちゃってさ」


 彼女は不満そうにしながらも、山田から離れた。

 山田の方は黙々とコンドームを外し、口を縛って近くのゴミ箱に捨てていた。


 うつむいて、考えこむ。


 彼のことが頭から離れなかった。

 少し前までは、彼のグループのいじめの対象だった男子生徒――東雲のことが。


 漠然とした不安と……恐怖。

 そのために、せっかくの美人教師とのセックスにも今一つ集中できなかった。


「ん、なんか顔色悪いわね?」


 川本が眉を寄せた。


「なんでもねーよ!」

「まあ、クラスメイトが立て続けにあんな死に方したんじゃ、無理ないか」

「……俺はビビってねぇ」


 山田が顔を上げる。


「あはは、何ムキになって――」

「ビビってねぇ、って言ってんだろーが、クソが!」


 感情が暴発するのを抑えられない。

 自分でも驚くような勢いで怒りの炎が吹き上がる。


「謝れ!」

「ち、ちょっと……」

「土下座して謝れよ!」


 言いながら、彼女を殴りつける。

 二発、三発……。


「わ、分かった……分かりました……! そ、その、申し訳ありませんでした……」

 さすがに恐怖を感じたのか、彼女はその場に這いつくばり、山田に頭を下げた。

「……クソが」


 山田は空中に向かって毒づいた。

 東雲に対して恐怖を感じている――それは彼にとって屈辱でしかなかった。


「このまま済ませるわけにはいかねぇ……」


 胸の中にわだかまるモヤモヤを解消するために、俺は東雲を――。


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