5 公園にて


「ふう、予定が狂ってしまったな」


 俺は近隣の公園で一息ついていた。


 全身からゾクゾクするような興奮が沸き上がっている。


 普段とは違う殺し方だからだろうか?

【爆殺】と違って、『殴る』という原始的な殺し方だったから、気持ちの高ぶりが大きいんだろうか。


 罪悪感は、当然のようにない。

 ま、社会のゴミ掃除をしているだけだしな。


 俺の中では『殺人』ではなく『駆除』という感覚が近い。


 実際、あの近隣住民は奴らの集会に迷惑していたはずだ。

 近くを通りがかって、恐喝なり暴行なりの被害を受けた者もいたかもしれない。


「ま、気分爽快だったし、いいか。次に行こう」


 俺は気持ちを切り替えた。


 この町にはもう一つ高校がある。

 そっちのヤンキー勢力をまず俺の『兵隊』にしよう。




 ――ぞくり。




 ふいに背筋が粟立つような感覚を覚えた。


「なんだ……!?」


 周囲を見回す。


 誰も、いない。


 だけど、誰かの――いや、何かの気配を感じた。


 その正体は……なんだ……!?


 俺はもう一度、周囲を見回した。


 俺以外に誰もいない公園。

 ブランコと滑り台、鉄棒、そして小さなモニュメント。


 公園内にあるのはそれだけだ。


「ん、モニュメント……か」


 元気に走る子どもを象った彫像だ。

 俺はその前に歩み寄った。


「何か……引っかかるな」


 俺は精神を集中し、スキルを発動した。


 もしかして、と閃くものがあった。


「【撲殺】発動」


 ごがあっ!


 見えない拳が彫像を破壊する。


 このスキルは人間相手じゃなくても使用できるのか。

 ちょうどいいスキルテストになったけど、それは本来の目的じゃない。


 本来の目的は――彫像の破壊。


 そして、その中に何かがあるのか、何もないのか……それを確かめること。


「なんだ、こいつは――?」


 彫像の内部から現れたものに、俺は眉根を寄せた。

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