5 俺は自分の能力について考察する


「おはよう、鈴木さん」


 俺は席に着くと、彼女に声をかけた。


「おはよう、東雲くん」


 鈴木さん、あいかわらずよく見ると結構可愛いし、何よりも優しい雰囲気に癒されるんだよな。


 山田たちとのやり取りで殺伐とした気分だったから、ちょうどいいヒーリングタイムだ。


「なんだか、ご機嫌だね」

「ん、まあな」


 俺は鈴木さんに微笑む。


「人生、やっぱり楽しく生きなきゃって思って」


 そういえば――。


【強制】を上手く使えば、単純に『自分の命令を相手に聞かせる能力』にならないかな?

 今まで、殺しても構わない相手にしか使っていなかった。


 だけど、条件付けを気をつければ、殺したくない相手に言うことを聞かせる、って使い方もできるだろう。


 一定条件がトリガーになって相手を死に至らせるんだから、『絶対に達成できない条件』を設定すれば、『殺す』能力ではなく『絶対服従』の能力として機能するはず。


 よし、この辺を試してみよう。

 使いこなせれば、俺の人生は無敵だ。


 まあ、今のままでも無敵なんだけどな。


 どんな相手でも念じただけで殺せる能力。


 屋上で二十人以上のヤンキーに囲まれても、苦も無く撃退できる能力。

 俺を傷つけられる奴なんて、もうどこにもいないんだ――。




 その日の帰り道。


 俺はコンビニに寄った。

 今日発売の漫画雑誌を立ち読みするためだ。


 と、そこでちょっとしたトラブルを目にした。


「なんでレジ袋にいちいち金払わなきゃいけねーんだよ? あ?」


 叫んでいるのは五十代くらいの男だ。

 いい年して、どうでもいいクレームつけるなぁ。


 レジ袋の有料化は法的なものだし、しかも数年前に決まったことだ。

 今さら文句を言ってもどうにもならないだろうに。


 しかも、そいつが延々とクレームをつけているせいで、後ろに並んでいる人たちがいつまでも会計できない。

 完全に渋滞していた。


「迷惑極まりないな。どうでもいいクレームをつけるなよ、オッサン」


 俺はそいつをにらんだ。

 と、視線に気づいたのか、そいつが俺を睨み返す。


「ああ?」


 威圧的な視線だった。


 まあ、今の俺にはなんの威圧にもならないが。


 ――殺すか。


 処刑決定だ。

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