23 ヤンキーに囲まれるが無問題

「なんだよ、こいつらは?」


 俺は連中を見回した。


 ……なるほど、そういう手で来たか。


「俺の仲間だよ。お前と遊ぶために呼んだんだ」


 山田が顎をしゃくる。


「遊ぶ?」


 俺は首をかしげた。


「へえ、どう遊ぶんだ?」


 俺は彼らを見回した。


「てめえ、なんだその態度は!」

「殺されてーのか、ゴラァ!」


 ヤンキーたちが吠える。


 しかし、この俺に対して『殺されてーのか!』とは、な。

 思わず吹き出してしまった。


「随分と大げさな人数を呼んだな。こっちは弱っちい陰キャ一人だぞ」


 言いながら、俺は奴らに向かって進み出る。

 奴らも多少は俺を警戒しているのか、いきなり殴りかかってはこなかった。


 ――よし、ケンカに発展する前に『仕込み』といくか。


 俺は奴らの間を進みながら、すれ違いざまにそっと袖口に触れていった。


 ジロジロと意味ありげに奴らを見たり、あらぬ方向を見つめては、


「なるほどな……」


 などと意味ありげにつぶやいておく。


「???」


 奴らはさらに警戒したのか、襲ってこない。

 正直、いきなり問答無用で囲まれ、一斉に殴る蹴るされていたら、さすがに危なかった。


 だけど、そうなる前に俺はすべてのヤンキーになんとか触れ終えることができた。


 これで『強制』を発動するための条件――相手に直接触れる――はクリアした。


 さあ、こいつらをどうしてやろうか。


 殺すか?

 呪うか?

 強制的に何かをさせるか?


 ああ、楽しくてたまらない――。


「何笑ってんだ! 田中と佐藤を殺したのは、お前だろ?」


 山田が怒声を浴びせた。


「さっさと手をついて詫び入れろ! あいつらに対してな!」

「土下座しろ、か? ははっ、仮に俺が謝ったところで、あいつらは生き返らないだろ?」


 もっとも――こいつは別に本心から謝罪を求めているわけじゃないんだろう。


 ただ、俺を屈服させたいだけだ。

 精神的に優位に立ちたいんだ。


 俺に恐れている心を、克服したいんだろう。


 そうはさせないけど、な。


「証拠も、根拠すらなしに――言いがかりはやめろ」


 俺は冷たく言った。


「根拠? 証拠? いるか、そんなもん!」

「状況から見て、てめぇが一番怪しいだろうが!」

「俺らをコケにしやがって!」


 口々に罵るヤンキーたち。

 当然ながら全員が山田の味方のようだ。


「お前ら、本当にバカだな。そんなんで怯むと思っているのか」


 もう一度、俺はせせら笑った。

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