20 正義の味方3(竜堂視点)


 やはり東雲は邪悪だ。

 許すわけにはいかない。


 けれど、今はまず通行人を助けるのが先決だった。


「やめろ!」


 ヤンキーを前蹴り一発で吹っ飛ばす。


「大丈夫ですか? ここは危険だ、離れた方が――」


 襲われていたサラリーマンに声をかけると、


「不用意に近づきやがって」


 彼はニヤリと笑った。


 嫌な予感がした。


 サラリーマンはおもむろにカバンからスプレー缶を取り出し、竜堂に吹き付ける。


「うあっ……!?」


 催涙ガスのようなものだろうか。


 痛みで目を開けられない――。




「――なるほど。無関係の奴は殺せない、ってことか」




 声が、聞こえた。

 それも至近距離から。


「ヤンキーは別にいくら死んでも俺の心は痛まない。そっちのサラリーマンは道路に何度も唾を吐いてたのを見かけて、ムカついたから『兵隊』にしてやった」

「ど、どこだ……!?」


 竜堂は周囲を見回す。

 吹きかけられた催涙スプレーで目が痛くて、上手く開けられない。


「お前の能力も俺と同じで、対象を正確に見つめないと発動しないんだろう? ここまでの戦いで大体の推測はできた」

「東雲……だな?」

「お前の能力は危険すぎる。ここで始末させてもらうぞ――」


 ゾッとなった。


「セリューエル! 東雲を拘束しろ!」

『了解』


 どさり。


 次の瞬間、何かが倒れるような音が聞こえる。


「……セリューエル?」


 返事はない。


 まだ視力が回復せず、周囲の状況はつかめない。


 一体、何が起きたんだ……?


 竜堂の中で焦りだけが募っていく。


「セリューエルは今、死んだ」


 東雲の冷たい声が聞こえた。


「次はお前だ」


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